ルネサス、第5世代車載用SoC「R-Car X5H」発表。3nmプロセスを採用し消費電力30~35%低減
ルネサス エレクトロニクスは11月13日、第5世代R-Car(R-Car Gen 5)の第1弾として、車載用SoC「R-Car X5H」を発表した。
R-Car X5Hは、先進運転支援システム(ADAS)、車載インフォテインメント(IVI)、ゲートウェイの複数のアプリケーションに使用できる新世代の車載用SoC。
アプリケーション処理用に32個のArm Cortex-A720AE CPUコアを搭載して1,000k DMIPS以上の性能を、6個のCortex-R52 CPUコア(ロックステップ)で60k DMIPS以上の性能を実現し、外付けマイコンなしでASIL Dを可能とする。最大400 TOPSのAIアクセラレータと最大4 TFLOPSのGPUを搭載し、チップレット技術を適用したことにより、AI性能やグラフィックス処理性能の拡張が可能となった。
TSMC社の車載用先端3nmプロセスを採用し、5nmプロセスで設計されたデバイスより消費電力を30~35%低減することで、電力効率により冷却部品を削減できるため、システム全体のコストを低減して電気自動車(EV)車両の航続距離の延長に貢献する。
同製品は、車載システム開発時に課題となるセキュリティ&セーフティに対応するため、ハードウェアベースの独自の分離(パーティション)技術を適用したことで、安全レベルの異なる複数の車載アプリケーションを1チップ上に相互干渉することなく搭載できる。
SDVの開発は、車両の安全性を確保しながら、演算性能、消費電力、コスト、ハードウェアとソフトウェアの統合を最適化する必要がある。R-Car X5Hは、アプリケーション処理、リアルタイム処理、AI処理、グラフィック処理、大型ディスプレイへの表示、センサ接続などの機能を1チップで実現することにより、次世代の自動運転やIVI、ゲートウェイアプリケーションに対応した。
同製品に搭載した強力なAIアクセラレータのNPUとGPUをベースとして、チップレットを追加することで、AI処理性能が400 TOPSなものを、外付けのNPUチップレットを組み合わせることで3~4倍以上に向上できる。チップレットはシームレスに追加できるよう、チップレットのダイ間を接続する標準規格UCleとAPIを提供し、マルチダイシステムで他社チップレットとの相互運用性を促進した。この設計手法により、ユーザーはさまざまな機能を組み合わせ、車両プラットフォーム全体のアップグレードに備えて、システムのカスタマイズが可能となる。
車載システムは、ハードウェアベースの無干渉技術を適用。ブレーキなどの高度な安全レベルが求められる機能を、低い安全レベルの領域から分離できる。高い安全性が求められる機能は、冗長化した独立ドメインに割り当てられ、各ドメインに独自のCPUコア、メモリ、インタフェースを持たせることで、他のドメインのハードウェアやソフトウェアに故障が発生した場合でも影響を受けないため、重大な車両故障を回避できる。さらに、ワークロードの優先順位を見極めてリアルタイムに処理リソースを割り当てるQoS管理機能も備える。
R-Car Gen 5は、ゾーン型ECUからハイエンドの集中型コンピューティングまでの幅広い処理要件をサポートし、エントリレベルの車両から高級車までを対応する。Arm CPUコアをベースとするハードウェアアーキテクチャを採用しているため、R-Car X5Hをはじめとする64ビットSoCから32ビットマイコンまで、同じソフトウェアやツール、アプリケーションを再利用できる。
32ビットマイコンは、Armコア搭載の新R-Carマイコンも展開し、車両制御用のポートフォリオを拡充する予定で、ボディとシャシー向けにセキュリティを強化したArmコア搭載の車載制御用マイコンは、2025年第1四半期にサンプル出荷を開始する予定。
SDV開発を加速化するため、ハードウェアとソフトウェアを包括的な開発プラットフォーム「R-Car Open Access(RoX)プラットフォーム」に統合。ユーザーが次世代の車両を迅速に開発し、安全性を確保しながらソフトウェアアップデートを継続的に実施するために必要なハードウェア、オペレーティングシステム、ソフトウェア、ツールを統合している。RoXは、ADAS、IVI、ゲートウェイ、クロスドメインフュージョンシステムからボディ制御、ドメイン制御、ゾーン制御のシステムまで、幅広いスケーラブルなコンピューティングシステムを設計できる柔軟性に優れたプラットフォームとなる。