自動運転レベル4をめざす自治体-地方で進むMaaSの実証実験
沖縄県北谷町で進行中のMaaSプロジェクトに迫る
MaaSプロジェクトを進める沖縄県北谷町では、将来的に自動運転レベル4の運用を目指している。観光や地方経済の発展に、自動運転技術はどのように貢献できるのだろうか。
沖縄県北谷町(ちゃたんちょう)で、将来的に自動運転レベル4の運用を目指すMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)プロジェクトが進められている。
コロナ禍以降は観光客数が減少しているが、それ以前の2019年までは年間1,000万人を超える観光客が沖縄県を訪問していた。2023年4月から、国内では一定の条件のもと、自動運転レベル4での公道走行を認める制度が導入される予定となっている。
レベル4では、不測の事態への対応も含め、すべての運転操作をシステムに任せるドライバーレスの車両が運用される。それに向けたさまざまな実証実験や開発が各所で盛んに行われている。
北谷町のMaaSプロジェクトが成功すれば、より多くの人が自動運転に触れる機会が増え、実証データの取得も加速するだろう。
遠隔車両を含めたMaaSプロジェクトを進める沖縄・北谷町
沖縄県では、観光客の6割以上がレンタカーを利用する。ほとんどの観光客が空港近くのレンタカー店で手続き・返却を行うため、付近の道路渋滞は観光客・地元住民の両方にとって深刻な問題となっている。その問題を解決するべく生まれたのが、北谷町のMaaSプロジェクトだ。
2021年11月から北谷エアポートエクスプレスの名前でシャトルバスの運行を開始した。那覇空港と北谷町を最短45分で結び、北谷町を沖縄観光のハブとすることで、渋滞を解決しつつ観光客がギリギリまで観光を楽しめることを狙った。移動中は、ガイドから現地の話し言葉や情報を聞くことができるため観光客には好評だ。
また北谷町では、いくつかの観光名所が点在する南北2kmのエリアにおける移動が課題として挙げられていた。車で移動すれば問題ないが、徒歩では時間がかかる。そこで、ショッピングやグルメスポットで若い世代を中心に人気の”アメリカンビレッジ”と、リゾートホテルが立ち並び大人の雰囲気を醸し出す”フィッシャリーナ地区”を遠隔操作の自動運転車で結び問題の解消を図った。
2021年3月から運行している「美浜シャトルカート」には、安全確認のための保安要員は乗車しているが運転手はいない。オペレーター1名がレベル3の自動運転機能を備えた車両2台を遠隔操作して運用している。
運行エリアは杭などで区画分けされ、一般車両が進入しないため道路交通法の規制を受けない。技術的にはレベル3に該当するため、現状ではレベル3相当と表現されている。
同じ時期に、国内で初めて自動運転レベル3が福井県永平寺町で認可された。北谷町の車両は、永平寺町で使われたものと同等の機能を有している。ただし、永平寺町では遠隔操作者1名が3台の車両を操作していたが、北谷町ではコースの道幅などの走行環境を考慮して、遠隔操作者1名に対し車両2台としている。
北谷町の美浜シャトルカートで特筆すべきはそのビジネスモデルにあるといえる。車両内のモニターに企業広告を表示し、広告収入を得ることで運行経費を捻出している。利用料金を無料とすることで、多くの観光客の利用を促している。
観光地に合わせたデザインで視認性を高め、安全性の向上にも配慮している。観光客、地元企業や地元住民にメリットがあり、慢性化するドライバー不足を解決する可能性もあり、他の観光地での活用も期待される。