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日本のライドシェアは海外から何を学べるか。普及に必要なのは人中心の制度設計と、既存事業との共存に丁寧に向き合い続ける姿勢

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日本のライドシェアは海外から何を学べるか。普及に必要なのは人中心の制度設計と、既存事業との共存に丁寧に向き合い続ける姿勢

政府は2024年4月、「ライドシェア」を解禁した。

ライドシェアは、一般のドライバーが一定の条件の下で、自家用車に他人を乗せて報酬を得ることを可能にする制度を意味する。もちろん誰でもどこでもライドシェアを始めていい訳では無い。ご承知のこととは思うが、ライドシェアは従来「白タク行為」として道路運送法で禁止されていた。

ライドシェア導入に関する議論は、ライドシェアサービスの人気が世界的に急拡大した2010年代半ばにも盛んに議論されていたが、日本ではライドシェアを解禁しないという判断が下されている。その主な理由の1つとして挙げられるのがタクシー業界の猛反対だった。

当時急速に広がるライドシェアに危機感を覚えたのは日本のみではない。世界中の国や地域のタクシー業界が声高に禁止を叫んでいた。しかしその後ライドシェアが解禁され、タクシーと併存する国や地域が増加した。その一方、日本ではライドシェアを認めようという動きは鈍く、最近までライドシェアが禁止されていた数少ない国の1つだった。

10年以上前から存在し、常に戦いながら成長してきた諸外国のライドシェア。対してつい最近産声をあげたばかりの日本のライドシェア。この2者には成熟度、受容性などにおいて海外と大きな乖離がある。

これからライドシェアを加速させるのであれば、学ぶべきこと、向き合うべきことは非常に多岐に渡りそうだ。

2024年4月からスタートした日本のライドシェアとその概要

まずは解禁されたライドシェアの概要を確認する。

日本におけるライドシェアの要点を簡単にまとめると、

・運行管理などはタクシー会社が行う
・ドライバーは雇用契約に限らない
・都市部を含め、タクシーが不足する地域・時期・時間帯を対象とする

となる。ライドシェアの車もタクシーと同じアプリで配車依頼し、料金もタクシーと同じである。運行管理以外にも、ドライバーの教育、車両整備、運送責任などもタクシー会社が行う。さらに、日本全国で解禁されるのではなく、配車アプリのデータを分析し、タクシー不足のエリアや時間に限定して解禁される。

当制度開始の決定を行なったのは、岸田文雄首相が議長となり、デジタル技術を活用した規制緩和などを議論する「デジタル行財政改革会議」。当会議が新制度を創設し、これを受けて交通政策審議会の自動車部会が具体的な制度設計を進行した。

同会議が2023年12月に決定した「デジタル行財政改革中間とりまとめ」には下記の文章が記載されている。

「タクシー事業者が運送主体となり、地域の自家用車・ドライバーを活用し、(スマートフォンの)アプリによる配車とタクシー運賃の収受が可能な運送サービスを2024年4月から提供する」道路運送法7条は自家用車を有償運送に使ってはならないと定める一方、「公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき」(同条3号)などは例外的に認める。

タクシー事業者が運送主体となって、地域の自家用車・ドライバーを活用し、タクシーが不足する分の運送サービスを供給すること(道路運送法第78条第3号に基づく制度の創設)が決定された。

ここで着目すべきは「公共の福祉のためやむを得ない場合」だろう。これはタクシーが不足する地域、時期、時間帯に対して向けられた目線だ。

国土交通省によれば、法人タクシーの乗務員は2006年時点では約38万人だったのに対し、2022年ではなんと約2万人と、45%も減少した。特に2019〜2022年は約5万人減と急激な減少となっている。

現在では国内需要はコロナ禍を経て戻りつつあり、特に訪日外国人客は急回復している。しかしその結果として、タクシー不足がより顕在化した格好だ。

3月13日、国交省はタクシー配車アプリのデータなどに基づいて算出したタクシーの不足状況を公表した。

それによると、タクシーが不足する主な地域と不足台数は、東京都の2区と武蔵野、三鷹市が5,690台、神奈川県の横浜、川崎、横須賀各市などは1,420台、愛知県の名古屋、瀬戸、日進各市などは280台、京都府の京都、宇治、長岡京市などは890台の不足とされた。

今後、タクシーが不足する地域・時期・時間帯におけるタクシー不足状態を、道路運送法第78条第3号の「公共の福祉のためやむを得ない場合」であるとして、地域の自家用車や一般ドライバーによって有償で運送サービスを提供すること(自家用車活用事業)を可能とする許可を行っていく予定だ。なお、今回公表の対象としていない営業区域の不足車両数についても、順次公表を予定しているとのこと。

また、規制緩和により原則として実施区域内に発着すればライドシェアが運行可能になった。実施区域に住む人が自宅から区域外の鉄道駅、ショッピングセンター、病院などの往復にライドシェアを利用できるようになるなど改善されている。

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