自動車の未来を支える API 策定プロジェクト「Open SDV Initiative」設立。オンライン記者会見で語られたビークル APIのこれから
名古屋大学は、この度「Software Defined Vehicle(ソフトウェア・デファインド・ビークル)」すなわちSDVに関心のある企業に参加を呼びかけ、「Open SDV Initiative」を設立し、SDVに重要となるビークルAPIの策定プロジェクトを開始した。
今回の発表を機に参加企業の募集を本格的に開始するとしており、それを踏まえ8月頃から本格的な活動を見込んでいる。そして2025年3月を目標に、ビークルAPI仕様の第1版の公開を目指しているようだ。
当活動は、経済産業省と国土交通省が2024年5月に公表した「モビリティDX戦略」に掲げられた日系メーカによるSDVの世界シェア3割達成に貢献するため、賛同いただける企業と共に、ビークルAPIの策定に取り組むものだ。
当記事では2024年6月20日に行われたオンライン記者会見の様子を取りまとめた。
今回、当プロジェクトの説明を務めるのは、名古屋大学大学院情報学研究科付属組込みシステム研究センター長、教授の高田広章(たかだひろあき)氏だ。
目次
100年に一度の自動車業界の変革「CASE」にいかにして対応するか
現在、自動車産業は100年に一度の大変革期にあると言われている。その変革におけるキーワードとなるのが「CASE」であると高田氏は言う。
CASEは通信機能を意味するConnected(コネクテッド)、自動化を意味するAutonomous(オートノマス)、自動車の共有を意味するShared(シェアリング)、電動化を意味するElectric(電動化)の4つの頭文字から作られた造語で、今後の新しい車の開発の軸となる考え方を表現したものだ。
このCASEは、車載コンピューターにも影響する。例えば通信機能の観点ではサイバーセキュリティが非常に重要な課題だ。脆弱性が見つかれば当然ながら迅速な修正が必要となる。
もし車を自動化するとなれば、これまで見られなかった生成AIのような新技術を取り込まなければならない。これにより車載情報システムの構成に大きな変化が求められる。
シェアドサービスは車を一台の一つのものと捉え、それをさらにネットワークで繋ぐ必要があり、その特性上クラウドと組込みシステムの役割分担が課題となる。
電動化により車載コンピューターに与える影響は比較的小さい。ただし、エンジンなど、これまで機械が用いられた箇所がソフトウェアで制御しやすくなることが期待できるとした。
従来のハードウェア中心の開発から、ソフトウェア中心の開発へと移行しSDV時代が到来する
大きな変革期を迎えた自動車業界は、従来のハードウェア中心の開発からソフトウェア中心の開発へと移行しつつある。
現在ではエンジン制御、燃費向上、安全運転支援、自動運転機能、車内エンターテイメントなど、自動車が持つ機能や価値、振る舞いの多くをソフトウェアが決定づけているといっても過言ではない。
近年、自動車業界では「SDV」という言葉が広まった。これは、「ソフトウェアで機能や価値などが定義される車両」を意味している。エンジン制御にマイコンを用いる試みは、1970年代から始まっており着実に進歩を遂げてきた。
SDVの代表的な例としては、OTA(Over-the-air)アップデート機能が挙げられる。これは、インターネット経由でソフトウェアを更新することで、車両販売後も機能を拡張したり、性能を向上させたりすることができる機能だ。スマートフォンがアプリをインストールすることで機能を拡張できるのと同様に、SDVはソフトウェアを更新することで、常に最新の状態を維持することができる。
このように、自動車のソフトウェアは重要性を増し、OTAによる更新が当たり前になりつつあると言える。