ホンダのカーボンニュートラル戦略|次世代の燃料電池システムを外販し水素の普及でCO2削減を目指す【水素という選択肢 Vol. 1】
ホンダの目指すカーボンニュートラルの実現手段は「モーターでクルマを動かす」。電源としてはバッテリーというのが順当なところだが、燃料電池による発電という手段も検討して精力的に取り組みを進める。
CO2排出量削減に向けて、BEV以外の選択肢にも注目が集まるようになってきた。その1つである水素の活用について、Motor Fan illustrated 197号(2023年3月)から抜粋して紹介する。<情報は当時のもの>
TEXT&PHOTO:MFi FIGURE:Honda
ご存じ、燃料電池とは水素と空気中の酸素を化学反応させ水を作るプロセスにおける、電子の授受によって発電する仕組み。バッテリーのエネルギー密度は課題が大きいのに対し「水素は70MPaの高圧縮であればバッテリー比で容積密度では5~10倍、液体水素であればさらにその1.4倍」(水素事業開発部部長・長谷部哲也氏)が見込める。さらにバッテリーは充電に時間を要するのに対し、水素ならば充填は数分。クルマのパッケージングとユーザーの利便性をともに解決できるのが燃料電池式電気自動車というわけである。
水素を得る手段としては、再生可能エネルギーを想定。太陽光や風力発電となると安定稼働と需要変動対応の両面から難しさがあるが、水素生成となれば貯蔵が比較的容易であることも期待される。貯めておけば遠隔地への運搬も可能だとホンダは説明する。
一方でネガティブな要素といえば、燃料電池スタックの電極に必要な白金を用いることによる資源問題とコスト、そしてインフラの整備である。いくら充填速度と可搬性に優れるといっても「詰めるところがない」のでは使い道が大きく限られてしまう。そこで今回、ホンダは次世代型燃料電池システムの外販という手段をとることにした。プレイヤーを増やすことにしたのである。
現在、GMと共同開発を進める第2世代燃料電池システムを、2024年に北米および日本市場でFCEVとして販売。その後、同システムの外販をスタートさせていく。販売台数としては、当初は年間2000基、2030年に年間60000基、2030年代後半には年間数十万基を目指す。
システムの想定使途もFCEVのみならず、大型商用車や定置電源、建設機械への適用も視野に入れる。たとえばトラックを電動化しようとすると巨大なバッテリーを積むことになり、積載量と航続距離が大きく損なわれてしまう。前述の水素の可搬性を存分に生かすことで、完全電動化も狙えるという期待だ。実際、ホンダはいすゞとトラック型FCEVの取り組みを進めていて、2023年度中には公道実証実験も開始する予定。建機や電源向けに高出力が求められる場合は、システムを複数接続することで対応していくという。
以下は、そうした戦略を図に示したものだ: