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ホンダ10兆円越えの投資判断は英断か、誤断か。期待される中長期のEV市場育成手腕

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ホンダ10兆円越えの投資判断は英断か、誤断か。期待される中長期のEV市場育成手腕
sylv1rob1 / Shutterstock.com

ホンダは2040年までに世界で販売する全ての新車をEVとFCEV(燃料電池式EV)にすると宣言している唯一の日本メーカーであり、最もEV化に前のめりな会社とも言える。

同社は2022年8月、ホンダは韓国のLGエナジーソリューションと合弁で、アメリカにてEV向け電池工場を新設すると発表している。ホンダが自社専用の電池工場を新設するのはこれが初めてで、当時44億ドル(約6,300億円)を投資するとされていた。ホンダがパートナーとして白羽の矢を立てたのはLGエナジーソリューション。

LGエナジーソリューションは、ゼネラル・モーターズや欧州ステランティスとも合弁で工場を作っており、GMとはオハイオ州、テネシー州、ミシガン州の3カ所で、電池工場の建設を進めてきた。

ホンダの米国部門は2024年2月29日にバッテリー工場の建設が最終段階に入ったと発表しており、2025年中に、北米で生産販売されるEV用にリチウムイオンバッテリーの量産を開始、全量をホンダの北米工場へ供給する予定だ。年間生産能力は40GWhを目指している。

ホンダはカナダにEVと電池工場を新設すると公表したのはこの発表からわずか2ヶ月後の2024年4月25日のことだ。

その総投資額は150億カナダドル(約1兆7,000億円)にものぼり、カナダ政府などの資金支援を受けつつ、近い2028年にも稼働を想定している。

この投資額はホンダとしては過去最大規模だ。積極的に投資を進めるホンダの電池戦略を眺める。

ホンダ最大の市場北米における巨額投資

アメリカで好調に売り上げを伸ばすホンダにとって、特に北米は最大の市場だと言える。今回大規模投資に踏み切ったのは、当地域で電池の安定供給体制を確立することでコスト競争力を高め、カナダでの電動化の取り組みを加速していく狙いがある。

北米はホンダの世界販売の4割を占める重要地域だ。今現在ではガソリン車の販売が大半を占めているものの、北米のEVやFCEVの販売比率を2030年には40%、2035年には80%に引き上げる方針を掲げる。

カナダ新工場で生産する電池は自社製品のみではなく、GMや日産など他の自動車メーカーへ供給される可能性もある。また、今後の需要動向を見ながら北米で3カ所目となるEV工場を検討していることも明らかにしている。

今回投資に踏み切った新設工場の年間最大生産能力は24万台規模、電池の生産最大能力は36GWhを想定。補助金などを踏まえると、総投資額の1兆7,000億円のうちホンダ負担分は6〜7割となる見通しだ。電池は自前調達し、従来の電池からコストの20%削減を目指している。

電池の主要原材料では、韓国・ポスコと正極材、旭化成とセパレーターをつくる合弁会社をカナダで立ち上げる。

投資の内容は今後半年で精査し、2024年秋に最終決定するようだ。

しかしカナダ工場のメイン供給先となるアメリカEV市場は、近頃の政治問題なども絡んで少々減速気味であることは否めない。

EVの需要は各国の導入支援策などによっても増減する可能性を理解した上で、潜在的な需要減退には至っていないと判断したと考えられる。足元の市場動向が不安定な中、中長期戦略をブラさないホンダの判断が吉と出るか凶と出るかはまだ不明だが、EV市場が逆風の中でも大型投資に踏み切った姿勢は賞賛に値する。

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