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#1-2 スロットル・ロスを減らす方法も「?」マーク:兼坂弘の毒舌評論 復刻版 「いでよ 画期的エンジン」

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#1-2 スロットル・ロスを減らす方法も「?」マーク:兼坂弘の毒舌評論 復刻版 「いでよ 画期的エンジン」

市街地走行における25%負荷程度ではガソリン・エンジンは燃費が悪い。その原因は、スロットル・ロスがかなりあるからだ。いまのところ、スロットル・ロスのないガソリン・エンジンは気筒数変換方式を除いては成功していない。とはいえ、3気筒から6気筒へのつなぎがギクシャクするとか、故障しやすいとか未だ問題が残されているようである。(モーターファン1987年9月号より転載;情報は当時のもの)

▼特集:兼坂弘の毒舌評論 復刻版 第1回 「いでよ 画期的エンジン」 目次
#1-1 なにもクリエートしていない  
#1-2 スロットル・ロスを減らす方法も「?」マーク ← 閲覧中
#1-3 セラミックは有望だが…
#1-4 パワーを4倍出すエンジンにチャレンジ

日本のエンジン技術者は、あの世界一厳しい、不可能かと思われた排ガス規制をクリアした。しかし、これはガソリン・エンジンに限ってである。ディーゼル屋は泣くだけだ。

ディーゼル・エンジンの規制はザル法で、エンジンのある運転状態に限って定めているだけて、ガソリン・エンジンのように走行距離当たりの排出量の規制ではなので、比較的楽にゴマかせるからだ。

ただ、ガソリン・エンジンには具合がいいことがある。それはEGRが使えることだ。ひとつは排ガス温度が高いので、ガソリンの蒸発がいい。また、ガソリン・エンジンでは軽負荷時にはスロットル・ロスがあるわけだが、EGRすることによってリーンバーンになるとそのマイナス仕事が多少は減る。

フルロードではガソリン・エンジンもディーゼル・エンジンも燃費はさほど変わらないが、市街地走行などの25%負荷ぐらいで走るとガソリンは燃費が悪い。その原因として、スロットル・ロスがかなりある。それを減らせばディーゼル並みにちかづく。ちなみに、ディーゼル車の全負荷走行燃費はガソリン・エンジンとの差が少ないせいか、表示されていないケースが多い。

燃料消費自体は、東名を走ったらガソリンとディーゼルとではさほど変わらないが、市街地では大幅に違うのである。

いまガソリン・エンジンは燃費をよくするためにリーンバーンにしているが、EGRはリーンバーン化する効果があったわけだ。ただ、最近ではO2センサーを使って精密に空燃比コントロールをして、EGRを使用しないケースが増えてきているようだ。これはEGRすると燃焼効率が悪化するので、むしろ燃焼をよくするためにホンダの新CVCCや日産のツイン・プラグのように急速燃焼させる方向になってきている。

三元触媒とO2センサーもすばらしい外国の発明だ。空気と燃料が完全燃焼するようにいつもコントロールするのだから、燃費が悪いわけがない。馬力も出せる。

本題に戻って、いまのところスロットル・ロスのないガソリン・エンジンは気筒数変換方式を除いては成功していない。

気筒数変換方式はアメリカのイートン社で最初に発明されたと思う。

これはGMのキャデラックの8/6/4エンジンとして脚光を浴びたが、現在は製造中止されている。BMWや三菱では目下健闘中である。

たとえば、6気筒エンジンの場合は、負荷が半分になるまでは6気筒すべてが働く。負荷が半分になると3気筒は死んだふりをしていて、残りの3気筒はフルスロットルでガンバり、スロットル・ロスを少なくしようとする考えである。が、3気筒から6気筒へのつなぎがギクシャクするとか、故障しやすいとか未だ問題が残されているようである。

ガソリン・エンジンではミクスチャーが薄くなると火がつきにくくなるので、点火プラグの近くだけを濃くしておきたい希望があって、CVCCの他にフォードの成層燃焼方式プロコも有名であるが、未だに成功していないようだ。ベンツがレーシングカーに使っていたガソリン筒内噴射(市販のEFIは筒外噴射)はディーゼル・エンジン並みの燃費となりうるわけだが、コストと信頼性に問題があって、近日発売、乞うご期待!というわけにはいかない。

それではストイキオメトリー(最適空燃比)なミクスチャーを絞らずに、吸気量のコントロールが可能ならば、軽負荷時のスロットル・ロスをなくすことができるわけで、日産やGMではその研究を行なった。

方法としては二通りの考えがある。

ひとつは、スロットル・バルブのないエンジンのインレット・バルブを、吸気中に自由な位置で閉じる方式。

アイドルでちょっとだけ吸入して閉めてしまう。ところが、この“先閉め”方式は、図からわかるように負荷の低下とともに圧縮比が低下して、低負荷では火が付かない。要するに、スロットル・ロスはマイナス仕事をしているけれど、ミクスチャーの温度を高める効果はあるわけである。

もうひとつは“後閉め”方式。軽負荷のときでも絞らずにピストンの下死点にまで100%吸気する。

フルパワーのときはここで吸気弁を閉じるが、軽負荷のときは圧縮行程中でも吸気弁を開きつづけ、一度吸ったミクスチャーの大半を吐き出してから吸気弁を閉める。が、今度は吸気弁でミクスチャーの出入りがあって、ミクスチャー温度が高くなりすぎてノッキングしてしまう。

この“後閉め”方式はGMでトライしているが、いずれにせよ、こうした方法はあまりメリットがないようだ。スロットル・バルブをなくしてみたところで、こんどは吸気弁が絞りとなってスロットル・ロスを半分くらいしか減らせないのだ。筆者も実験してみたのだが。

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