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水素発展戦略の鍵はローカライズか。「地域」に活路を見出し進む中国

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水素発展戦略の鍵はローカライズか。「地域」に活路を見出し進む中国

18世紀の産業革命以降、石油や石炭などの化石燃料に大きく依存してきた。しかし、21世紀に入り、この依存関係の代償が明らかになってきた。地球温暖化の加速、エネルギーをめぐる国際紛争、そして大気汚染の深刻化など、様々な問題が私たちの前に立ちはだかっている。

こうした背景の中、究極のクリーンエネルギーとして「水素」が注目を集めている。

水素は、燃焼時に水しか排出せず、化石燃料の3倍以上の燃焼エネルギーを持つ。常温・常圧下では無色無臭の気体であり、その潜在的な用途は多岐にわたる。直接的なエネルギー源としての利用はもちろん、燃料電池による発電や、次世代自動車の駆動源としての活用が期待されている。

しかし、水素にも課題がないわけではない。

課題感は決して小さくないが、水素エネルギーの可能性と期待値はそれを上回るものがある。水素を主たるエネルギーとすることができれば、地球温暖化問題や大気汚染、資源戦争の無い社会を実現できるだろう。

様々な課題解決に各国が喘ぐ中、中国が独自路線で成長戦略を進めているように見える。中国では水素エネルギーを商用車に活用する方向も見出しているようだ。

2050年には8兆円程度と予想される水素市場、多くの課題を解決できるか

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まず水素エネルギー市場を外観しよう。

現在は家庭用燃料電池システムなどの定置用燃料電池が中心となっている。燃料電池自動車の導入と水素ステーションの整備により初期市場が形成され、これらの本格的な普及や、水素を利用した発電の導入により、大きく拡大することが期待されている。

NEDOの予測によれば、国内市場規模は2030年に1兆円程度、2050年には8兆円程度に達するとされている。さらに、日経BPクリーンテック研究所の予測は世界規模での展望を示しており、それによると世界の水素インフラの市場規模は、2020年には既に10兆円を超え、2030年には40兆円弱、2040年には80兆円、そして2050年には160兆円に達すると見込まれているようだ。

この予測からは水素エネルギーが今後数十年にわたり、急速かつ持続的に成長する可能性を感じる。初期段階では定置用燃料電池や燃料電池自動車が市場を牽引し、その後、より広範な用途、特に大規模発電への応用され、市場が拡大すると考えられる。

この成長曲線は、水素技術の進化とそれに伴うコスト低減、さらには環境規制の強化や社会の意識変化などの要因が複合的に作用した結果だと推察される。特に、2050年に向けての飛躍的な成長予測は、水素が化石燃料に代わる主要エネルギー源として確立される可能性を示唆している。

しかし課題も山積している。
水素社会の実現に向けては、継続的な研究開発投資、インフラ整備、そして国際的な協調が不可欠となる。市場の潜在性は極めて大きいが、その実現には産学官の連携と、社会全体での取り組みが不可欠だ。

さらに水素そのものの特性も課題解決の困難さに拍車をかける。
水素の体積エネルギー密度はガソリンの約1/3,000と極めて低く、実用化に向けては効率的な貯蔵技術の開発が欠かせない。
また、水素は非常に燃焼・爆発しやすい性質を持つ。そのため、高圧ガス保安法容器保安規則により、赤いボンベでの保管が義務付けられているなど、取り扱いには細心の注意が必要となる。

これら様々な問題が複雑に絡み合っていることで前述の市場予測は適切かはまだ判断が難しい。水素市場の成長は技術革新や政策支援、国際情勢など、様々な要因に数字が左右されることはいうまでもない。そのような背景もあり、日本及び諸外国はまだまだ水素エネルギーの本格運用には踏み切れていないようだ。

そんな中、中国ではそのような国々を他所目に独自の成長が進んでいるようだ。

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