FCVを支える水素製造技術、天然ガスを原料とした新規技術の開発は日本の勝機となるか
21世紀は「天然ガスの世紀」と称され、水素製造における天然ガスの重要性が高まっている。
現在、世界の年間水素製造量は約5,000億Nm3に達する。その97%が熱化学的手法で製造され、原料の約半数を天然ガスが占める。このようにして製造された水素は主に、アンモニア・メタノール合成などの化学産業や石油精製に利用されている。
化石燃料は「二酸化炭素排出」と「資源の有限性」が課題とされているが、天然ガスは他の化石燃料と比較して環境負荷が低い。また、シェールガスを含めると我々の生活を100年に及んで維持が可能な膨大な量が埋蔵されている。
この資源を利用して水素を生成しようという動きが世界的に進む。
グレー水素やブルー水素といった化石燃料をベースとした水素をつくる場合には、化石燃料を燃焼させてガスにし、そのガスの中から水素をとりだす「水蒸気改質法(改質)」と呼ばれる製造方法が採用される。
改質法はすでに確立されている技術ではあるがデメリットも存在する。本記事では、天然ガスを原料とする水素製造技術を概観していく。
目次
資源から水素を取り出す水蒸気改質法には、その過程で二酸化炭素が発生するというデメリットが
水蒸気改質法とは、化石燃料である天然ガスやナフサなどを水蒸気と高温で反応させて合成ガスを得る方法だ。
本手法の特徴は、大規模な水素製造に適しており、既存の産業インフラとの親和性が高いことにある。そのため、現在の水素製造において中心的な役割を果たしている。
そんな水蒸気改質法の歴史は古く、初めて工業化されたのは1930年代、アメリカでのことだ。1960年代には大きくその技術を発展させ、現在では最も経済的な大規模水素製造法として広く使用されている。
しかしながら、水蒸気改質法には複数の課題が存在する。最も顕著な問題点として、製造プロセスにおける二酸化炭素の発生が挙げられる。これは、原料に化石燃料を使用することに起因しており、環境負荷の観点から懸念事項となっている。
さらに、この方法は反応の進行に多大な熱エネルギーを要する。そのため、大型の加熱炉が必要となり、結果として製造設備全体の大規模化を招くというデメリットがある。この特性は、設備の初期投資コストや運用コストの増大につながり、また設置場所の制約にもなり得る。