自動車メーカーを持たずとも自動運転先進国となったシンガポール、同国がAVRI 2020首位を獲得
シンガポールは、国内に目立った自動車メーカーやサプライヤーを持たない。しかしながら、世界的に自動運転が最も推進されている国として、注目を集めている。
コンサルティング大手の多国籍企業「KPMGインターナショナル(KPMG International Cooperative)」が発表した2020年度の「自動運転車対応指数(AVRI)」では、シンガポールが総合で1位を獲得した。以下の順位は2位オランダ、3位ノルウェー、4位米国と続き、日本は11位だった。
このAVRIは、世界30の国と地域における自動運転車の準備状況を測定し、様々な情報源から抽出した28種類の指標をスコア化・順位付けしたものだ。
その測定内容は自動運転車となっているが、実際にはEVをはじめとした「CASE(Connected, Autonomous, Shared & Service, Electrification)」を含む対応度が指数化されている。
その評価基準となる指標は「政策と法律」「テクノロジーとイノベーション」「インフラストラクチャー」「消費者の受容性」の4つの領域でまとめられている。
自国の産業として自動車に優位性を持たないシンガポールは、なぜAVRIで首位を獲得できたのだろうか。
目次
自国の自動車メーカーを持たないシンガポールが「自動運転車対応指数 2020」において総合首位を獲得
2020年度のAVRIで総合首位を獲得したシンガポールは、政策と法律、消費者の受容性で1位を、インフラストラクチャーで5位、テクノロジーとイノベーションでは11位を獲得している。
この結果は、実証実験エリアの拡大やボルボとシンガポール南洋理工大学(NTU)が共同で行う自動運転EVバス事業、政府の政策などで高い評価を獲得したことにより、自国の自動車産業の弱みをカバーした結果と言えるだろう。
2019年10月、シンガポールは実証実験を行えるエリアを拡大し、同国の西部すべての公道でのテスト走行が可能となった。なんとその距離は620マイル(約1,000km)に及び、これはシンガポール全体の1/10に相当する範囲だ。
2019年3月、ボルボとNTUが、このエリア内で運用予定の全長12mの自動運転EVバス事業を開始。約80人が収容可能なこのバスはフル充電でおよそ25km走行可能だ。さらに、エンジニアリング大手「ABB」の300kWの急速充電システムを使い、最大容量まで約6分間で充電することができる。
そして、2022年からは3つの地域で自動運転バスの運用を計画しており、それに向けて100名のバスドライバーを自動運転バスの安全管理者として再訓練を行った。
世界経済フォーラムの「Global Competiveness Report」でも、シンガポールの優れたインフラによって支えられているこの取り組みは、世界最高と評価されている。
このような実証実験エリア拡大やインフラへの取り組みに対して国民の理解が得られているのは、シンガポールの人口密度の高さに起因するものだろう。同国では、日本と同様に人口密度故に公共交通需要が高く、より高効率な公共交通機関の需要も高い。
諸外国と比べて地方自治体が存在せず、国土面積が狭いシンガポールでは、政府の主導で自動運転を推し進めるのも容易だ。自動運転対応の法整備及びインフラ整備も実施しやすいのではないだろうか。
また、2040年までにすべての内燃機関車の廃止を目標として掲げているのもシンガポールが評価されたポイントだ。
政府は、自動運転の普及やこれらの取り組みに、600万シンガポールドル(430万米ドル)を出資し、EV充電ステーションの数を2030年までに28,000基まで増やし、EV購入時の補助計画も実施される。
この制度では、対象となる車両購入費用のうち、平均して11%が補助される。