政府主導の下、実証実験を進めてきたオランダの歩み。レベル3自動運転に貢献した「TomTom」の存在
2016年にパリで開催されたモーターショーにて、ドイツ「ダイムラー」の当時の取締役会会長・最高経営責任者を務めたディーター・ツェッチェ氏の発言によって、今後の自動車の未来の方向性を示す「CASE(Connected, Autonomous, Shared & Service, Electrification)」の概念が登場して以来、自動車技術は目覚ましい進歩を遂げている。
自動運転もそのうちの一つだ。自動運転技術は2009年、Googleによって現在の自動運転車開発企業「Waymo(ウェイモ)」の前身となる自動運転プロジェクト「Self Driving Car Project」が開始した前後から飛躍的に向上した。
現在、米国や中国では既に、自動運転タクシーによる一般道路の無人走行がはじまっている。
そして自動運転はこれまでのルールでは基準が定まっておらず、その範囲から逸脱していた。そのためこれを推進する国は、インフラ整備はもちろんのこと、法整備にも取り組まなければならなかった。
2018年より、コンサルティング大手の多国籍企業「KPMGインターナショナル(KPMG International Cooperative)」は、自動運転車導入に関する準備が整っており、実現に最も近い国を順位付けした「自動運転車対応指数(AVRI)」を発表している。
そして2018、2019年度と続けてAVRIにおける総合首位を獲得したのはオランダだ。2020年度はシンガポールに首位を奪われたものの、オランダは世界的に見ても自動運転先進国といって差し支えないだろう。日本の総合順位は、2018年度は11位、2019年度は10位、2020年度は11となっている。
目次
自動運転車対応指数において二年連続で総合首位を獲得したオランダの取り組み
2018〜2019年の動向を見ると、2018年12月にWaymoが世界初となる自動運転車タクシーサービスをアリゾナ州フェニックスでスタートしたのが最も印象深い出来事として挙げられるだろう。
ただしAVRIの評価基準となる指標は「政策と法律」「テクノロジーとイノベーション」「インフラストラクチャー」「消費者の受容性」の4つの領域でまとめられている。つまり、自動運転技術に対する受け入れ態勢が評価されているということだ。
さらに、その測定内容は自動運転車に限らず、実際にはEVをはじめとした「CASE(Connected, Autonomous, Shared & Service, Electrification)」を含む対応度が指数化されている。
2018年度のオランダに対する報告書には、インフラの充実、政府の積極的な支援体制、EVを進んで受け入れようとする消費者の姿勢などが、モデルに相応しいと評価されている。
2019年度の評価は、運送と物流における自動運転の利用状況の調査や関連する新法の可決など、自動運転に対する適切な対応が首位を維持できた理由として挙げられる。
他にも、2018年にトラック隊列走行を実現した出来事や、数十台の自動運転配送トラックを国際ハイウェイ上で走行させる政府の計画などが影響している。
2020年度にはシンガポールに首位を奪われたものの、政策と法律や政府が出資する自動運転実証実験の項目では高評価を獲得し、自動運転規制の項目においては最高スコアを獲得している。
さらに、実証実験が広範で行われていることから、人口の81%が自動運転の実証実験が行われる近隣に居住し、それが消費者の受容性の評価につながった。
このように、これまで総合的に見て高い水準で自動運転の環境構築に取り組んできたことが、オランダがAVRIにて評価されている理由と言えるだろう。