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世界的に車両生産台数が減少する「厳しい年になる」とCEOが語る2024年。ZFグループは、ハイブリッド、AIと商用車生産で昨年並みの売り上げを目指す

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世界的に車両生産台数が減少する「厳しい年になる」とCEOが語る2024年。ZFグループは、ハイブリッド、AIと商用車生産で昨年並みの売り上げを目指す
ドイツから来日したクラインCEOによる記者会見を横浜で行ったZF。

ドイツの自動車システムサプライヤーZFが2023年度の業績を発表した。グローバルでの売上高は対前年比6.5%増の466億ユーロ、調整後EBITは24億ユーロ(2022年は20億ユーロ)に達した。ボッシュやデンソー、コンチネンタルなどと並ぶ自動車用システムサプライヤーの同社は、商用車向け事業では業界トップの規模を誇る。また風力発電用ギヤボックスの世界シェアは25%を占めるなど、幅広い分野に製品・技術を供給している。

アジアパシフィック地域への期待

3月27日に来日したZFグループのCEO、ホルガー・クライン博士は「2023年はZFにとって“チャレンジング”な一年でしたが、すべての事業エリアで良好な業績を残し、市場におけるポジションの強化に成功しました」と話す。「北米の売上高が前年比でプラス6%、欧州が同10%だったのに対し、アジアパシフィック地域では13%の成長を達成しました。グローバルな売り上げにおけるアジア地域の割合は24%でしたが、2030年までにこれを30%まで伸ばす計画です」とアジア市場への期待を語った。

継続的な成長を支えるため、昨年は工場や設備に前年よりも18%増となる22億ユーロを投資。研究開発には同3%増の35億4,300ユーロを投じた。

2024年の見通し

今年の売上高は450億ユーロを見込んでいるという。昨年の466億ユーロから減少している主な要因は、台湾の鴻海科技集団(フォックスコン)との合弁会社設立によるもの。2023年7月にフォックスコンが「ZF シャーシモジュール社」株式の50%を取得し、ZFグループにおける連結割合も50%に変わったためであるとの説明があった。

さらにクラインCEOは、2024年が厳しい環境になると見ている。グローバルに車両生産台数が落ち込むと予想しており、乗用車および小型商用車は2023年の約9,060万台から8,770万台へ、中・大型の商用車は334万台から326万台にそれぞれ減少を見込んでいる。ZFグループとしては、商品ポートフォリオの拡充を中心に、需要の減少を補いながら売上をあげていく計画だ。

得意のトランスミッションでHEVに活路?

事業の柱の一つとしてクラインCEOが挙げたのは、「Flex Manufacturing Facilities」つまり柔軟な生産設備だ。米国サウスカロライナ州にある工場には、5億ユーロを投じて生産能力を拡大したという。この「グレーコート工場」とドイツのザールブリュッケン工場では、市場のニーズに応じてプラグインハイブリッド(PHEV)やマイルドハイブリッドなど様々な仕様のトランスミッション生産に柔軟に対応できるという。

BEVの需要が減速する中、中国ではPHEVの普及が加速傾向にあり、北米や欧州でも同様の傾向が見られるという。インセンティブなどBEVに関する各国のルール変更や充電インフラの整備状況によっては、「ハイブリッド・ルネッサンス」が起こる可能性も示唆した。ZFとしては、得意のトランスミッションに統合したハイブリッドシステムに改めて活路を見出しているようだ。

AIの量産と商用車生産の開始

高性能コンピューターおよびソフトウェアの分野にも注力していくという。今年の第4四半期には、ポーランド工場で車載AIの「ZF ProAI」量産を開始する計画だ。「ライフを通じて“many million”ユニットを出荷する計画」であるとクラインCEOは話した。

ZFジャパンの多田直純代表取締役社長からは、昨年発表したラストワンマイルデリバリーEV用のプラットフォーム、「エナリティ」に関する事業の進捗が語られた。「“エナリティ”という名前には、エネルギーとモビリティの融合という意味を込めました。このプラットフォームを活用した商用車生産に関しては、パートナー企業のめどがつきました。現在、協業に関する最終的な協議を行っております」とのことで、間もなく何らかの正式発表が行われるようだ。

ZFグループは2026年までの今後3年間に、研究開発に106億ユーロ、設備に75億ユーロ、合計180億ユーロを投資する計画だという。

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