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QRコードとスマホで、朝目覚めるとクルマは満充電|ユビ電「WeCharge」快適なEV充電ライフを実現

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QRコードとスマホで、朝目覚めるとクルマは満充電|ユビ電「WeCharge」快適なEV充電ライフを実現

マンションやオフィスで行う基礎充電を中心としたEV充電事業に力を入れる東京・港区の「ユビ電株式会社」(以下ユビ電)。提供する電気自動車充電サービス「WeCharge」はスマート分電盤とQRコード、アプリ、クラウドシステムで充電状況を管理する。また、ブロックチェーン技術を用いたグリーンエネルギーの利用や、AIによる充電管理など先進的な技術の活用も進めている。同社の創業者であり代表取締役の山口 典男氏に、ユビ電開発の苦労と今後の展望をうかがった。

他社に先駆け、QRコードを活用したEV充電システムを開発

QRコードの活用にいち早く着目した(画像はユビ電プレスリリースより)

ユビ電が展開する電気自動車充電サービス「WeCharge」は、専用アプリを使用し、手軽にEV充電ができるサービスだ。例えば、自宅マンションでの充電も、スマホで簡単な設定を行うだけで朝起きたら満充電になっている。特長の1つがQRコード(※1)の活用である。ユビ電が提供する充電端末には、WeCharge認証課金システムと連携したQRコードが貼り付けられており、EVユーザーはアプリで充電器・コンセントのQRコードを読み込む。充電はQRコード認証後に開始され、請求はWeChargeアプリに登録されたクレジットカードを介して行われる。

ユビ電はもともと、ソフトバンクグループの一プロジェクトとしてスタートした。各地での実証実験などを行い、およそ10年の準備期間を経て、2019年に独立を果たした。独立により、事業の自由度は格段に広がったが、一方で資金面での制約が生じた。事業展開の具体的な施策を考えるものの、設備投資のコストがのしかかるからだ。

電気自動車充電サービス「WeCharge」(画像はユビ電提供)

「低コスト・短期間で立ち上げられる効果的な方法を考えてください」という周囲からの声を受け発想を転換し、QRコードの活用にたどり着いた。当時EV充電サービスでQRコードを活用しているのはユビ電だけだった。QRコードの仕組みを考えた当時は、ちょうどPayPayの普及が始まった頃。山口氏は通信事業時代の経験からフェリカなどの各種認証方式の知識があった。「認証方法は人が持ち歩いているデバイスに依存する。では、社会に広く普及したスマホを使用するサービスはどうだろうか?」さらに、スマホと同様に社会に浸透しつつあったQRコードとの組み合わせが思い浮かんだ。

「10年、15年前だと話は違っていたかもしれません。」と山口氏。「10年前にコンセントにQRコードを貼り、これをアプリで読んでくださいって言っても、戸惑う人は多かったと思うんですよ」。総務省の情報通信白書によると、2011年に10%弱だったスマートフォンの普及率が5割を超えたのは2015年だ。世間への普及と時流をとらえる眼力は、携帯電話会社時代の経験の賜物だ。

※1:QRコードは、株式会社デンソーウェーブの登録商標。

クラウドとスマート分電盤にシステムを集約

「WeCharge」はWeCharge HUBと呼んでいる。スマート分電盤につないだEVコンセントに、QRコードを貼り付けている。ユーザーは専用アプリを使用し、スマートフォンでQRコードにアクセスし、EVコンセントの使用を宣言する。すると管理システムとクラウドで繋がったWeCharge HUBが、充電のON・OFF、充電量の計測を行うのだ。 コアシステムはクラウドとスマート分電盤に集約されている。

「こうして説明すると単純な動作だと思うんですけど、これを大量に安定的に制御するというのは意外と難しい。スマホの接続不良や電波の状態など、各種の不安定要素を全て包含し、サービスとして安定的に提供するのは簡単ではないんです」と山口氏。通信業界で積んだ経験を応用しているのだそうだ。「携帯電話事業者は課金のエンジンを動かすために、年間多分数百億円くらいかけていますが、弊社では低コストで安定的なIoTネットワークの提供を実現しています」。

また、分電盤で電力量の制御を行うWeChargeでは、使用するEVコンセントにはこだわらない。品質が安定し国内企業が市販する数千円から1万円程のものを使用している。コンセントから流れる交流電源はEV車搭載のコンバーターで直流に変換されるため、余計な機器を付け加える必要がない。国内メーカーがEV充電用のコンセントを「充電器」と称する中、テスラなど海外のメーカーでは、「チャージャー(充電器)」とは呼ばず「コネクター(接続器)」と呼んでいる。「これは非常に理にかなったことで、弊社でも充電コネクターは『充電器』ではなく『接続機器』として考えています」。(山口氏)

スマート分電盤でEV 充電を一元管理(画像はユビ電プレスリリースより)

誰が電気を作り、誰が使うのか

著者
石原健児

取材ライター。
1966年東京生まれの北海道育ち。大学卒業後、イベント関連企業、不動産業を経て印刷業へ。勤務先のM&A・倒産をきっかけに2016年からライター業を始める。医療系WEB媒体、ビジネス誌「クオリタス」などで活動。医師、弁護士、企業経営者、エンドユーザーなどを対象に取材してきた。総取材人数はだいたい1500人。就学前までに自動車や転落事故で「九死に二生」位は得ていると思う。最近好きな言葉は「生きてるだけで丸儲け」。

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