自動運転レベル4の課題となる情報送受信。分散するECUをいかに集約するか - 矢崎総業|人とくるまのテクノロジー展 2024
矢崎総業は、電気エネルギー・電子情報を社内に分配するシステムであるEEDS(Electrical Electronic Distribution System)ソリューションを発表した。EEDSは、
2030年頃の自動運転レベル4の車の形態を想定した、大電力化していくシステムへの電源供給や高速化していく情報処理を確実に提供する技術だ。今後ますます向上していくモビリティ性能を支える電源・通信技術について、担当者の方に話を聞いた。
TEXT&PHOTO:巖 朋江(Iwao Tomoe)
主催:公益社団法人自動車技術会
モビリティの中をつなぎ、高電圧化・大容量化に対応する
近年、電気自動車においては、商品性を高めるためにシステム電圧や動作電流値が上がり、車両バッテリは大容量化・高密度化している。それを解決するのが、EEDSのバッテリバスバーモジュールだ。バッテリに対し、機能を統合することで、低背化・統合化・計量化を実現し、バッテリの省スペース化を叶えている。
また、今後増加していくと考えられる800V BEVと、既存の400V急速充電器からの充電対応も電気自動車開発において課題となっている。その解決策となるのがバッテリ直並列切替ジャンクションボックスだ。充電時はバッテリを並列にすることで400Vに対応し、走行時は直列にして800Vで動くよう切替できる。「さまざまなニーズに応えられるよう、技術開発に取り組んでいます」と担当者は語る。
これらの技術を支え、繋げる役割を果たすのが高柔軟電線や高電圧コネクタだ。矢崎総業は「EEDSをモビリティの中をつなぐ仕組み」とうたっている。
点在するECUを集約。集中制御型アーキテクチャ
EEDSはモビリティ内で電源だけでなく、電子情報もつなぐ。
EEDSが想定しているのは自動運転レベル4の車両であり、その制御のためには膨大な量のカメラ映像データやセンサ情報の送受信が必要となる。車載ネットワークが膨大になり、センサが増えれば増えるほど、ワイヤーハーネス全体の重量が増加するうえ、コネクタ数が増加し自動運転ECUは大型化してしまう。そこでEEDSでは、従来の車両において100から200ほど点在しているECUをセントラルECUに集約している。さらに各種センサからの情報をセンサHUBによってエリアごとに集約することで、自動運転ECUの小型化を実現する。
さらに光ファイバーを用いた情報通信線を用いることで、通信速度の高速化も実現できる。「ECUが1か所に集中することで、車の出力を上げられたりオーディオ機能をつけられたりと、購入後に車のアップデートが可能になります」と本技術への期待を担当者は語った。
モビリティの発達に伴い発生する諸課題を一つひとつ解決する本技術は、今後重要性をさらに増していくだろう。