東芝ら、次世代リチウムイオン電池搭載のEVバス試作車公開。走行実証実験を開始
東芝、双日、CBMMは6月20日、ニオブチタン酸化物(NTO)を負極に用いたEVバス向け次世代リチウムイオン電池を搭載したEVバスの試作車を公開し、アラシャ鉱山で実証実験を開始した。
CBMMは、金属元素の一つで鉄鋼添加剤として高張力鋼など鋼材の原料に用いるニオブ(Nb)を生産しているブラジルの企業。ニオブは自動車向け鋼材の軽量化・剛性化には不可欠とされており、同社はニオブ市場で世界1位の生産量と販売量を誇る。
双日は、CBMMの日本市場向けの総代理店として、安定的な原料供給体制の構築や用途開拓を進めてきた。CBMMと双日が提供するニオブ原料を用いて、東芝が主導してNTOを用いた次世代リチウムイオン電池の技術開発を進めていた。
今回開発した同電池の負極材に用いているNTOは、リチウムイオン電池の負極材として一般的に使用される黒鉛と比較して、2倍の理論体積容量密度を持つ。
3社は、2018年6月に、NTOを用いたリチウムイオン電池負極材の共同開発契約を締結し、試作セルを開発。2021年9月に、商業化に向けた共同開発契約を結び、量産プロセスの確立と早期の市場投入に向けて、主にEVへの応用を目指し、さらなる協業を進めてきた。3社は、2023年8月に共同販売契約を締結し、サプライチェーン構築に向けた活動と営業・マーケティング活動を推進。2024年5月には、ブラジル・日本両国政府関係者の立ち合いのもとサプライチェーンの強靭化と事業化の推進について合意している。
今回の実証実験では、ラテンアメリカにおけるEVトラックの開発・生産の先駆者であるフォルクスワーゲン・トラック・アンド・バスが開発したEVバスを使用。CBMMが権益を所有するブラジル・ミナスジェライス州にあるアラシャ鉱山で実走行する。NTOを負極に用いたリチウムイオン電池を搭載したEVの走行は世界で初めて(※)。
今後3社は、同電池の特性と車両運行データを収集し、商業化に向けた必要な調整を行う。2025年春にNTOを用いた次世代リチウムイオン電池の製品「SCiBTM Nb」の販売開始を目指し、グローバル展開に向けた活動を推進していく。
※2024年6月20日現在。3社調べ