40年にわたる技術開発の結晶「3D TOFセンサ」を遂に発表|ヌヴォトン、独自開発の新型車載向けセンサ「KW33000」を公開。5.6μ角に4つの信号用メモリを搭載。
2024年7月ヌヴォトンテクノロジージャパンが新たな3D TOFセンサ「KW33000」の量産を開始する。メインターゲットは産業・自動車関連業界。1cmに満たないチップの中に、先進技術を凝縮した。これまでにない新技術を投入したセンサの特徴やこだわり、具体的な活用方法について発表記者会見の場でうかがった。
TEXT:石原健児
目次
40年積み重ねた技術の結晶「3D TOFセンサ」
京都府に本社を構えるヌヴォトンテクノロジージャパン(以下:ヌヴォトン)は、40年にわたりイメージセンサ開発を続けてきた。2Dイメージセンサの累計出荷台数は6億台に及ぶ。
これまで培った画素設計技術やノウハウを活用し、2011年に開発を始めたのが「3D TOFセンサ」だ。TOF(Time of Flight)とは、センサと光源を組み合わせたTOFカメラを使用し距離を測定する技術。対象物に向けて赤外照射光をあて反射光との時間差で算出する。
ヌヴォトンは2015年に3D TOFセンサを民生用として量産を開始した。2018年には車載用へと転換。これまでの出荷実績は220万個を超える。今回同社が開発したのは、新たな画素設計技術と距離演算・ISP技術を搭載した3D TOFセンサ「KW33000」。距離画像とIR画像と組み合わせ、対象物の形や体積はもちろん、人の行動や物の動きも把握し幅広い空間センシング展開が可能になる。
幅1cm以下のチップに、画素・各種回路を集約
「KW33000」のチップは幅1cm以下。中央の画素エリア周囲に回路領域を設定。回路領域に「距離演算回路」「ISP(信号補正機構)」を搭載している。画素エリアは映像信号を受け取る役割を持つ。これまでのTOFセンサでは基準光・距離光・背景光信号用に3つのメモリを搭載していたが、ヌヴォトンでは、さらに「遠距離光」信号用のメモリを追加。わずか5.6μ角の画素内に4種類の映像信号をとらえるメモリを配置した。5.6μ角に4つの信号用メモリ搭載はヌヴォトン独自の技術だという。
この技術により10万ルクスという高照度の環境下での計測が可能となり、太陽光など屋外での測距が実現した。また、遠距離光用のメモリを加えたことで最大20mの測距も可能となった。測距に必要な4種類の映像信号を同時に取得するため、動きのある被写体でもブレなく測距することができる。また、夕方の西日など照度が高くノイズが多い環境においても、背景光を除去し白とびなどがない正確な画像を取得する。
取得した画像の出力に欠かせないのが画素エリア周囲に配置された「距離演算回路」だ。演算機能は高く、QVGA時、最大120fps(1秒間の画像数)という業界最速距離画像(3D)を生成。画像による機器制御や物体認識に威力を発揮し、高速かつ高い認識精度のセンシングシステムを実現する