セミアクティブ・ダンパーは何をやっているのか?
自動車の各部で進む「メカトロニクス化」の波。ダンパーも例外ではない
昨今、再び採用例が増えている「セミアクティブ・ダンパー」は、このような仕組みで作動している
TEXT:松田勇治(Yuji MATSUDA)
ILLUSTRATION:熊谷敏直(Toshinao KUMAGAI)
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機械的なバルブ機構による減衰力特性の設定は、機械機構ゆえの制約が付き物。速度依存型にしろ位置依存型にしろ、減衰特性は一意のものなので、想定外の状況には対応できない。
そこで考案されたのが、バルブ機構に「制御」可能なデバイスを織り込むことで減衰力特性そのものの自由度を高める仕組みだ。
たとえば同じ入力でも、車速に応じて減衰力を変えることができれば、乗り心地と操縦性安定性の両立が図れる。F1などに用いられた「アクティブサスペンション」が、路面状況を事前に調べ上げたり、センシングによってフィードフォワード制御していたのに対し、あくまで路面からの入力に応じてフィードバック制御することから、「セミアクティブ」と呼ばれるものだ。
1990年代に登場したセミアクティブダンパーは、圧側を極端に緩めておいて通常域の突き上げを抑え、速い入力が来たら油路切替えなどで減衰力を高めるものだった。しかし昨今、再び採用され始めたものは、パッシブダンパーとしてのチューニングを作り込んだ上で、機械的制約から抑制が効かなかった領域だけをアクティブ制御するものが主流だ。いわば、制御は「薬味」的な存在。こうすることで、旧来のセミアクティブに見られがちだった応答遅れなどのネガティブを解消し、乗り心地と操縦性安定性の高度なバランスを実現しているのだ。