強度と剛性はまったく別の指標
誤解されることが多い高張力鋼板の特性
素材の強度が高くなっても、自動的に剛性も高くなるわけではない。
高張力鋼板を用いて同じ強度で薄板化すると
形状がそのままでは剛性が低下してしまうので対策が必要になる。
自動車技術のなかでも、混同されやすいのが“強度”と“剛性”。イメージとしてはよく似た言葉だが、工学的にはまったく別の概念である。
強度とは「壊れるか、壊れないか」であるのに対し、剛性は「どのくらいの力をかけたら、どれくらい変形するか」ということだ。
話を単純化するために、針金を引っ張るモデルで考えてみよう。金属といえども引っ張れば伸びることは、ギターを弾く人ならわかると思う。チューニングするとき、ギターの弦は、ピンと張ったところからさらに巻き取ることができる。
これは弦が伸びているからだが、ギターの例えではわかりにくいので、片側を固定した針金を引っ張るモデルで考えてみよう。Pkgの力で引っ張ったとき、δmm伸びたとすると、“剛性”は、P/δ[kg/mm]ということになる。
さらに力を加え続けると、最終的には針金は切れる。このときにどれくらいの力まで耐えることができたかが“強度”だ。
ただし、同じ材料でも太い針金のほうが切れるまでに必要な力は大きくなる。それでは素材そのものの性質は表せないので、断面積で割って条件を揃える。力を断面積で割るため、単位は[kg/mm2]が使われてきたが、SI単位系の導入にともない、現在は[Pa(パスカル)]で表される。
そして、破断に至るまでの最大応力を“引っ張り強さ(引張強度)”といい、その数値が高張力鋼板のグレードを表すのに使われている。