開く
FEATURES

強度と剛性はまったく別の指標

誤解されることが多い高張力鋼板の特性

公開日:
更新日:
強度と剛性はまったく別の指標
(PHOTO:Global NCAP)

素材の強度が高くなっても、自動的に剛性も高くなるわけではない。
高張力鋼板を用いて同じ強度で薄板化すると
形状がそのままでは剛性が低下してしまうので対策が必要になる。

 自動車技術のなかでも、混同されやすいのが“強度”と“剛性”。イメージとしてはよく似た言葉だが、工学的にはまったく別の概念である。

 強度とは「壊れるか、壊れないか」であるのに対し、剛性は「どのくらいの力をかけたら、どれくらい変形するか」ということだ。

 話を単純化するために、針金を引っ張るモデルで考えてみよう。金属といえども引っ張れば伸びることは、ギターを弾く人ならわかると思う。チューニングするとき、ギターの弦は、ピンと張ったところからさらに巻き取ることができる。

これは弦が伸びているからだが、ギターの例えではわかりにくいので、片側を固定した針金を引っ張るモデルで考えてみよう。Pkgの力で引っ張ったとき、δmm伸びたとすると、“剛性”は、P/δ[kg/mm]ということになる。
 さらに力を加え続けると、最終的には針金は切れる。このときにどれくらいの力まで耐えることができたかが“強度”だ。

 ただし、同じ材料でも太い針金のほうが切れるまでに必要な力は大きくなる。それでは素材そのものの性質は表せないので、断面積で割って条件を揃える。力を断面積で割るため、単位は[kg/mm2]が使われてきたが、SI単位系の導入にともない、現在は[Pa(パスカル)]で表される。

そして、破断に至るまでの最大応力を“引っ張り強さ(引張強度)”といい、その数値が高張力鋼板のグレードを表すのに使われている。

衝突安全に必要なのはボディの剛性ではなく強度| “剛性”とは変形しにくい性質を意味するため、剛性が高いと衝突エネルギーのほとんどはキャビンに直接、伝わってしまう。“強度”は破断に至るまでの強さのことだが、エネルギー吸収の点で重要なのは、降伏点から破断点までの間にどれだけ多くの歪みを許容できるかだ。
サスペンションなどからの入力に耐えるのが剛性|剛性は操縦安定性や乗り心地を支配する領域。全体剛性が低いと、前輪で発生した横力が後輪に伝わる際にも遅れが生じるため、旋回姿勢が安定するまで時間がかかる。サスの着力点剛性が低いとダンパーは設計どおりの減衰力を発生できず、動きが反転する際にはズレが生じる。
著者
Motor Fan illustrated

「テクノロジーがわかると、クルマはもっと面白い」
自動車の技術を写真や図版で紹介する、世界でも稀有でユニークな誌面を展開しています。
http://motorfan-i.com/

軽くて強いボディの仕立て方

有料
限定
FEATURES
炭素繊維が拓く自動車の可能性
Motor Fan illustrated
有料
限定
FEATURES
アルミをうまく使えばクルマは変わる
Motor Fan illustrated
有料
限定
FEATURES
軽量化の特効薬、樹脂化に立ちはだかる数々の難問
Motor Fan illustrated
有料
限定
FEATURES
カーボンボディの直し方
Motor Fan illustrated
有料
限定
FEATURES
構造用接着剤で要所を固める
Motor Fan illustrated
有料
限定
FEATURES
遮音材/吸音材/防音材
Motor Fan illustrated

PICK UP