カーボンボディの直し方
BMW i3を題材にする
ここで、CFRPの補修とは如何なる作業なのかという本題に早くも突入するのである。
そもそもCFRP車体は全体を一体成形するわけではない。三次元的に複雑至極の形態をしている自動車車体の場合、それは不可能だ。そこで、部材ごとに成形して、各々を二液性エポキシ系接着材でつなぎ合わせる。
CFRP車体の修理はこの理路を応用する。外力によって壊れた部分をエアソーで切り取り、切除した箇所のCFRP材と同じものを作って接着するのだ。
だが、同じものと言っても厳密には同一素材というわけではない。当該部分のCFRP材をハンドレイアップで炭素繊維シートを張り込んで樹脂を含浸させ硬化させるのである。当日の教材たるi3の車体上屋をはじめマクラーレンやランボルギーニのCFRP車体はRTM法によるもの、つまり金型成形だから、ハンドレイアップ法とは製法が異なる。
とはいうものの、RTM法の場合は金型に炭素繊維シートを敷き込んでおいて、そこに樹脂を注入するから、どうしてもオートクレーブ法に比べて炭素繊維に対する樹脂の割合が多くなり、当然ながら剛性も落ちるので、釣り合いはとりやすいとのこと。またオートクレーブ法であればハンドレイアップ法よりも剛性は高いが、その場合は積層して厚みで補填するのだそうだ。
ところでi3の車体上屋は主体構造部分がRTM法。ということは熱硬化性樹脂である。しかし外皮は熱可塑性樹脂を用いるCFRTP。ということは、そこが補修が不可能ということになる。だが外皮は各々のピースに分かれて主体構造に対して接着で貼り込まれている。ひとつのピースを丸ごと交換して接着し直せばいいわけだ。