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炭素繊維が拓く自動車の可能性

MATERIAL EVOLUTION

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牧野:クルマ全体が真っ黒な素材、つまりCFRPではないということですね。

石野:はい。残念ながらTEEWAVE AR-1のような「黒いクルマ」は市販車には無理です。クルマへのカーボン素材浸透を現実的に考えると、補強材やシート状態での加工になります。CFRP骨格は頒価1000万円以上のクルマでなければ使えません。これを何とか700万円クラス、BMW5シリーズやメルセデス・ベンツEクラスに展開したいと考えています。

牧野:私が初めてボーイング787に乗ったとき、客室が加湿されていることと与圧が地上での大気圧に近いことに驚きました。12時間のフライトでも喉や肌が乾かない。着陸の前に高度を落としても耳がおかしくならない。足がむくまない。以降、長時間フライトは787しか考えられないようになりました。

石野:自動車だと、軽さのありがた味をお客さまに伝えにくいのです。レーシングカーならラップタイムという指標で説明できますから、カーボンモノコックは圧倒的に強い。しかし市販車は違います。

牧野:BMWは7シリーズで骨格補強材としてCFRPを使っています。鋼と抱き合わせたハイブリッド素材です。「補強材」とは、あのような使い方ですか?

石野:鋼とCFRPの相性は良好です。両方とも日本が技術面で優位にありますから、互いに協力しない手はないと思います。

炭素繊維はこう使われる|大元の素材は極細の「糸=フィラメント」である。これをどのような形で供給するかは、製品が必要としている強度や剛性、表面の意匠、コストなどで変わる。過去、自動車分野では織物を型に張り込んで真空加熱により成形するオートクレーブがCFRPの代表だったが、そこにバリエーションが生まれた。プリプレグとチョップドは将来に期待がかかる。「糸でなければカーボンの物性を活かせない」という時代は終わり、いまや適材適所という提案が主流である。

著者
Motor Fan illustrated

「テクノロジーがわかると、クルマはもっと面白い」
自動車の技術を写真や図版で紹介する、世界でも稀有でユニークな誌面を展開しています。
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