インホイールモーター|もはや「将来技術」ではなくなった市販車への搭載を想定した開発が始まった[ NTN ]
車輪の中に電気モーターを収容しドライブシャフトを廃止するこの方式は、すでに個別の車種対応の段階に入った。NTNはNEV(新エネルギー車)規制が始まった中国市場にフォーカスし、積極的な提案を行なっている。
TEXT&PORTRAIT:牧野茂雄(Shigeo MAKINO)
FIGURES:NTN
NTNがインホイールモーター(以下=IWM)を事業化したのは2011年だった。日本ではまだビジネスにはなっていないが、実用化に向けた開発は着々と進んでいる。とくに中国市場向けである。中国で開催されるモーターショーや展示会で同社は常連。中国の自動車メーカーのエンジニア諸氏の口からもNTNの名前を聞くようになった。
今年、中国はNEV(ニュー・エナジー・ビークル=中国表記は新能源車)を導入した。BEV(バッテリー電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池電気自動車)をNEVに定め、自動車メーカーに対して一定比率での量産を義務付けた。初年度である今年は罰則規定の適用外だが、来年からはNEV販売台数が基準を下回ると罰金が課せられる。NTNは中国の量産BEVニーズに対応した電気モーター系システムを提案する なかで、ひとつの選択肢として小型車用IWMを用意している。
その諸元は、最大出力30kW(これを前輪左右に1個ずつ)、最大トルク515Nm、最大回転数1135rpmとなる。方式は永久磁石をローターに埋め込むIPM同期モーターであり、これに減速比13.22のギヤを組み合わせてひとつの筐体に収める。入力電圧は二次電池の事情などに応じて250〜400V(ボルト)の範囲で対応し、冷却系はモーターが空冷、インバーターが水冷である。
「30kW×2のシステムなら、もう夢物語ではありません。中国のNEV規制は、ある程度の数のBEVが必要だろうと我々は考えます。台数を作る必要があるなら小型車だろうということで、まずは30kWをターゲットにしていますが、どのようなサイズでも量産する準備はあります。電圧は低すぎなければ構いません。あとはお客さん次第です。どれくらいのワット数を使ってどれくらいの走りに仕上げるか、というところです」