パッシブセーフティ MX-30 EV|そのとき、バッテリーは守られるか
マツダMX-30 EVのパッシブセーフティ技術
電気自動車の普及とともに懸念され始めたのが、衝突時の車両火災。リチウムイオン電池は電解液に可燃性の有機溶媒を使用しており、ひとたび発火すると、炎を吹き上げて一気に燃え広がる。しかも消火した後でも、内部に電気エネルギーが存在する間は、短絡による再発火のリスクを抱え続ける。衝突時に破損させるわけにはいかないリチウムイオン電池を、マツダはどう保護しているのか。MX-30 EV MODELの例をうかがった。
TEXT:安藤 眞(Makoto ANDO) PHOTO:EURO NCAP
FIGURE:MAZDA/NITTO
──MX-30には、ICE(内燃機関)搭載車とEV仕様の両方がある。EV仕様はICE仕様に比べて車重が190kg重くなり、衝突エネルギーは大きくなるはずだが、バッテリーの保護対策はどのようにしているのか?
濱田氏:「ベースプラットフォームは一括企画ですので、前後の衝突エネルギー吸収構造は共通です。前側では、衝突時にサスペンションサブフレームがバッテリーフレームと干渉しないよう、下に離脱する構造にしています」
──EVパワーユニットはICEに比べてコンパクトであるぶん、むしろクラッシュストロークを有効に生かせるという側面がありそうだが?
濱田氏:「エネルギー吸収スペースの確保がしやすいという点では、確かに有利です。一方で、バッテリーを搭載する分だけ車両重量が増えますから、衝突エネルギーで不利になった分を、広くなったスペースで補うかたちになっており、キャビンの安全性についてもICEと同等になるよう設計しています」
──側面衝突に対しては、バッテリー搭載スペースとエネルギー吸収ストロークが背反するが。
濱田氏:「センターフロア部は、EV専用の設計にしています。フロアトンネルを廃止してフロアをフラット化し、床上にクロスメンバーを3本配置しています。サイドメンバーより外側を潰して荷重をコントロールし、内側でバッテリーを保護します。バッテリーフレームにも3本のクロスメンバーを通しており、上下を使用してバッテリーケースを損傷から守っています」
──衝突した際の、外部への漏電対策はどのようにしているのか?
片山氏:「エアバッグのセンサーで衝突を検知し、バッテリーパック内のリレーを即座に遮断します。モーターや高電圧系の配線は、衝突時でも剥き出しにならないよう強度設計していますから、漏電の心配はありません」
──冠水路走行をした際の漏電や、バッテリーケースへの浸水対策については?
片山氏:「バッテリーパックやコネクター類は、すべて9クラス(IP8=水面下での使用が可能)の防水構造にしています。塩水に浸かった場合でも、カチオン塗装と肉厚の確保によって、バッテリーケースが腐食して水が入ることはないように設計しています」