東海大学・木村教授に訊く|日本のHEV技術を読み解くカギ
東海大学・木村教授に訊く
かつては“ガラパゴス”と揶揄されながらも、惑わされることなく堅実に“正論”を追い求めていった日本のHEV技術。バッテリーとパワーエレクトロニクスが重要であることについてはEVと同様だが、そこにはHEVならではの要素と特徴も少なくない。
TEXT:髙橋一平(Ippey TAKAHASHI)
PHOTO:山上博也(Hiroya YAMAGAMI)/TOYOTA/NISSAN/HONDA
目次
- Q1:なぜHEVではニッケル水素電池が
- Q2:車載用電池としてBEVを中心にリチウムイオン電池が大きく普及した背景にはどのような技術的要素があるのでしょうか?
- Q3:1997年のプリウス登場においてカギとなった技術は? また、高効率化ではどのような技術がカギになっているのでしょうか?
- Q4:トヨタが開発したバイポーラ電極技術はどのような点に注目すべきでしょうか? また、バイポーラ電極技術はリチウムイオン電池にも適用は可能ですか?:
- Q5:日本のHEVではバッテリー電圧を昇圧して利用する昇圧コンバーターを利用していますが、そこにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
- Q6:HEV用とBEV用のモーターにはどのような違いがあるのでしょうか?
- 電気エネルギー研究のスペシャリストからみた
- 世界に先駆け省エネ技術に取り組んだ日本、そこから生まれたHEV技術。これからは世界の基準づくりにももっと積極的に参加すべき
Q1:なぜHEVではニッケル水素電池が
A1:加速に必要とされるパワーや、減速時の回生で生み出されるパワーは、HEVでもEVでもほぼ同じです。EVと比べるとバッテリー(ユニット)が小さな(セル数が限られる)HEVでは、短時間で充放電する性能、つまりパワー密度が重視されます。
ニッケル水素電池に用いられるアルカリ性水溶液(水酸化カリウム)の“水系(すいけい)”電解液のほうが、リチウムイオン電池に用いられる有機溶媒系のそれよりもイオン伝導性に優れる特徴があり、パワー密度という点で有利です。
それともうひとつ、水系の電解液は溶媒となる水の電気分解が起きやすいものの、酸化触媒を使って電気分解により発生した水素と酸素をふたたび水に戻すことが可能なので(充放電性能の)“限界付近”を使いやすいという特徴があります。
つまり“ふんばりが効く”ということで、セル数が限られることから個々のセルの負担が大きいHEV用途に向いているといえます。
もちろんコスト的なメリットも大きいでのすが、性能や特性において、ニッケル水素電池はHEVにとっていまもなお魅力的な選択なのです。