サスペンションをめぐる、12の素朴な疑問
Ask for engineer
Q11:サブフレームの取り付け剛性は、乗り心地にどのように影響しますか? ブッシュを介してマウントされるものと、ダイレクトにボルトで締結されるものがありますが、どちらが良いのでしょうか? また、近年ではリジッドカラーという、ブッシュマウントをリジッド化するアフターマーケットパーツが見られますが、効果はあるのでしょうか?
外部からの入力に対して車体各部の幾何学的な配置を保つという意味で剛性は重要な意味を持つ。基本的にサブフレーム取り付け剛性は高いに越したことはない。しかし実際には、NVH性能を確保するためにサブフレームをブッシュマウントとしているものも多い。こうしたものはサスペンション側の振動がシャシー側に伝達されることを防ぐことができるが、シャシー側とサブフレーム側のそれぞれ独立したかたちで剛性を確保する必要で重量が嵩む傾向となるため、小型車には採用しにくいという側面がある。実例を挙げると、アテンザではサブフレームにブッシュマウントが用いられているが、アクセラやデミオではリジッドマウントとされており、シャシーとサブフレームの双方で支えあうことで、高い剛性を確保しながら軽量に仕上げることに成功しているという。重要なのはどちらも各部の部品単体からそれらを組み上げた状態に至るまで振動特性が計算されているということ。ブッシュマウントをリジッド化することは、剛性を確保するという意味では効果が期待できるかもしれないが、NVHは確実に悪化するといっても過言でない。現代の自動車では、それほどまでに綿密な振動設定によりNVH性能が確保されているということを忘れてはならない。
■Answer
結合部の支持剛性はとても大切。基本的に支持剛性は高いほど、操安性にも乗心地にもNV性能にも有利である。
Q12:ステアリングラックの取り付け剛性は、フィーリングのみならず乗り心地にも影響はありますか。サイズも決して小さくなく、左右にわたって伸びている部品だけに、構造部材としての期待もあるのでしょうか。また、タイロッドにはサスアームとしての機能はありますか。実際のタイロッドはキャリパーやハブを避けて複雑なカーブを描いていますが、やはり直線構造のものと比較すると剛性的に不利なのでしょうか?
ステアリング系は人間の体の中でも最も敏感な部分のひとつである手につながる部分だけに、剛性も重要ながら振動の遮断という要件が重視されるということを忘れてはならない。振動の遮断に用いられる主な手法はブッシュなどの緩衝要素を用いることだが、それは同時に剛性部材としての役割や、ステアリング操作の精度を確保するための正確な位置決めという要素に相反することになる。そこで用いられるのが振動の制御という手法。振動を遮断することなく、各部で発生する振動の共振点を常用域(エンジン回転数や速度など)から大きく外れたところに設定することで、ドライバーが振動として知覚しないレベルに抑えている。また、タイロッドは基本的にサスペンションのアームとしては働かないが、左右タイロッドエンドのスパンは、左右転舵軸のそれと異なる寸法設定とされており(タイロッドエンドの位置がアクスル位置よりも後方となる場合は短く設定)、旋回時に内輪と外輪の舵角差を生むようにされており、この部分においてはコントロールアーム的な役割を果たしてはいる(この作用をアッカーマンステアと呼ぶ)。
■Answer
ステアリングラックは剛性部材として機能させているし、振動特性のコントロール部材としても機能させている。また、タイロッドについては、必要な剛性等を確保し機能は等価にするのが常識なので、剛性が劣るということはない。ただし、直線的な形状のものと比べると、等価の機能(同等の剛性)を確保するために重量が大きくなっている。