サスペンションをめぐる、12の素朴な疑問
Ask for engineer
Q9:ストラット式の場合、スプリングの受け方の違いで、トップマウントの形式が主にふたつあるようですが、シンプルな構造ゆえにスプリングの扱い方で作動性にも大きく影響すると思います。それぞれの特徴との働き方の違いを教えてください。
ストラット式のサスペンションを理解するうえで大きなカギとなるのがその特性。ロワーケース外側に取り付けられるホイール/アクスルからの入力により、トップマウントから延びるインナーロッド部とロワーケース部がホイール/アクスルと反対方向(車体内側)に向かって“く”の字に折り曲げられるような力が働く。
この力はダンパーの摺動抵抗を増やし、作動性を妨げる。これに対処するひとつの方法として、ロワーケースとインナーロッド部の嵌合長を長く採ることが挙げられるが、もうひとつの方法として、スプリングの車体外側のセット長が長くなるように設定した変形スプリング(“Dバネ”や“Lバネ”と呼ばれる)で、折り曲げる力を極力キャンセルするという方法も用いられる。
■Answer
トップマウントには大きくふたつのタイプがある。①入力分離タイプと、②入力非分離タイプ。①のタイプは、バネ反力は直接ボディ(別のラバー介在)で受け、ダンパー減衰力のみをトップマウントで受ける構造で、ダンパー減衰力を遅れなく発生させる上下ばね特性と必要な横剛性を確保する左右バネ特性のバランス取りが必要。②のタイプはバネ反力もダンパー減衰力もトップマウントで受ける構造で、ばね反力も同時に受けるため特に上下ばね特性の設定自由度が低い。したがって、①のタイプの方が両立しやすい。
Q10:スタビライザーは、実際に所期の性能を発揮できているのでしょうか。屈曲点が多く、取り付け部位はブッシュに守られていて、ばねとしての性能はなかなか発揮しにくいのではないかと思えます。
スタビライザー(アンチロールバー)は左右のサスペンションをトーションバースプリングで接続して、ロール時に生じる左右のストローク量の差を制限することで、それを抑えようというものだ。乗用車ではレイアウト上の都合から屈曲点が多くなりがちで、このことがスプリングとして不利に働くことは事実。ただし、スプリングとしての効率もさることながら、重要なのはその効果と適合(相性)だ。
■Answer
スタビライザーは捩じられることでばね定数を発揮するものであり、取付ブッシュ間の中央部断面が効率的に捩じられるか否かが肝。アーム部が必要以上に長いものや屈曲が多いものは、その部分が曲げ変形してしまい中央部の捩じられ量を小さくしてしまうため非効率。ブッシュは車体への入力緩和・振動減衰から必要だが、上下変位が大きすぎると捩じり成分を減ずる要素となる。