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【海外技術情報】ルノー:水素燃料電池について知っておくべきこと

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【海外技術情報】ルノー:水素燃料電池について知っておくべきこと

持続可能なモビリティを推進するために、ルノーグループは従来のBEVだけでなく、水素燃料電池車に使用されているクリーンな技術とエンジンにも目を向けている。燃料電池とグリーンな水素を組み合わせることで、今後数十年間に起こるモビリティの新時代を先導して行く。水素燃料電池市場はまだ小さいが成長している。水素燃料電池には複数の利点がある。水蒸気のみを放出し、静かに走行し、ICE車と同等の航続距離と性能を有し、燃料補給時間は3~5分である。
TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA)

燃料電池は一般的にはあまり知られていない。それはエネルギー変換器であり、燃料を直接エネルギーに変換し、電気と水、そして熱を生成する。水素燃料電池は、最も一般的なタイプの燃料電池の一つであり、水素と酸素の混合物で作動する。環境への影響が少なく、クリーンでカーボンフリーな持続可能なソリューションとして自動車メーカーの関心を集めている。

燃料電池が機能する仕組み

燃料電池の仕組みは非常に単純だ。酸化還元(レドックス)と呼ばれる電気化学反応に基づいている。電子を放出する酸化陽極と電子を集める還元陰極という二つの電極で構成されている。触媒は二つの電極を中央の電解質から分離するために使用される。電解質は液体または固体であり、イオンの移動を助ける。
水素燃料電池の場合、水素を電気に変換します。アノード(陽極)内部では触媒が水素を電子と水素イオンに分解する。水素イオンは電解質を通ってカソード(陰極)に移動するが、電子は電気回路を通過して電気モーターとバッテリーに電力を供給する電気エネルギーを生成する。カソード内部では触媒が周囲の空気からの酸素が電気回路からの電子と結合するのを助け、それにより酸素イオンを生成する。酸素イオンが電解質からの水素イオンと混合すると、燃料電池の唯一の副産物である水分子を生成する。

水素燃料電池自動車とBEV(電気自動車)の違い

水素燃料電池自動車は電気自動車ファミリーの一部であるが、エネルギー源に水素を使用する。そして酸素分子と水素分子の間の化学反応により、燃料電池は電気モーターに電力を供給して、バッテリーを充電する。パワートレインを動かすために必要な電力は、燃料電池から供給される。燃料電池は車両に搭載された水素燃料を使用する。

電気自動車(BEV)は一般的にはリチウムイオン電池を使用して、充電プラグを差し込みグリッドから電気エネルギーを取得してバッテリーに蓄える。これが水素自動車の違いである。
水素燃料電池自動車への燃料補給には、高圧水素ガスを自動車のタンクに非常に迅速に注入できるポンプを備えた、専用の燃料補給ステーションが必要となる。それは現在のところ弱点とされている。

グリーン水素とはなにか?

水素燃料電池は電気自動車の普及を後押しする技術ソリューションの一つである。水素モビリティが持続可能であるためには、水素がグリーンでなければならない。言い換えれば、それは水の電気分解から来なければならない。電気分解プロセスに使用される電気が太陽光や風力といった持続可能なエネルギー源から供給されている場合、その水素は低炭素と見なされる。

水素燃料電池自動車のメリット

水素燃料電池自動車には多くの利点がある。それはストレスのない運転体験を実現して、電気自動車が有するほとんどすべての利点を持っている。遅延のない加速、静かな運転、無振動、一部の都市に設定されている低排出ゾーンへのアクセスなどがそれである。水素技術には、燃料補給時間の短縮と運転中の二酸化炭素排出量の削減という利点もある。わずか3~5分で水素を充填できるので長距離ドライブが楽になる。

ルノーグループが推進している水素燃料電池自動車

ルノーグループは電気自動車の設計、製造、販売、サービスにおいて10年以上の経験を有している。モビリティを新たな地平に導くため、水素燃料電池などの革新的技術に目を向けている。ルノーはすでに水素に関して経験を積んでいる。2014年にルノー「カングー ZE Hydrogen」がラインアップされたほか、2021年にルノーグループが出資する水素モビリティジョイントベンチャーであるHYVIAとも歩み始めている。
HYVIAは現在、水素燃料電池技術を搭載した三つのLCV(商用車)の低炭素モビリティを提供している。「Master Van H2-TECH」、「Master Chassis Cabin H2-TECH」、「Master City Bus H2-TECH」がそれである。これらのモデルではバッテリーが部分的に放電されている場合、燃料電池がレンジエクステンダーとして機能する。車両の航続距離を延ばし、長距離、急速充電、ゼロエミッションのモビリティを求める商用車の顧客のニーズを満たしている。
またHYVIAは新たに工場を開設して、フランスに本拠地を置く燃料電池組立ライン、水素ステーション、それに低炭素水素生産の提供を行う。こうして水素燃料電池分野での取り組みを拡大している。

商用車への技術の適用が成功するまでの間、ルノーは、これから開発される水素ネットワークを利用して、自家用車にそれを利用する方法も模索している。2022年、ルノーは「セニック ビジョン」を発表した。燃料電池技術とEVバッテリー技術の利点を水素燃料電池電気自動車に組み込んだ、ルノー独自の電気水素ハイブリッドエンジンを搭載した初のプライベートコンセプトカーである。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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