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【技術情報】ヤンマーなど:「水素4ストローク高速エンジン」の実証試験で定格出力約500kWを達成

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【技術情報】ヤンマーなど:「水素4ストローク高速エンジン」の実証試験で定格出力約500kWを達成

ヤンマーホールディングスのグループ企業であるヤンマーパワーテクノロジーが、内航船舶向け「発電用パイロット着火式水素4ストローク高速エンジン」の陸上実証試験を行い、定格出力約500kWでの運転に成功した。

「日本財団ゼロエミッション船プロジェクト」の支援を受けて開発

ヤンマーパワーテクノロジーを代表とする7団体(上野トランステック、京都大学、福岡造船、三井E&S造船、みらい造船、海上・港湾・航空技術研究所海上技術安全研究所)が「舶用水素4ストロークエンジン・水素エンジン対応大型内航タンカー開発コンソーシアム」を構成して、日本財団の「ゼロエミッション船の実証実験にかかる技術開発助成プログラム」により陸上実証試験を行った。

ご存知のとおり、日本は2050年までの温室効果ガスの排出量を実質ゼロ(2050年カーボンニュートラル=脱炭素社会の実現)、を目指している。それに沿えば海事分野においても、内航船(国内の港間を航行する船舶)からの二酸化炭素排出量を2050年までにゼロにする必要がある。それを実現するための一つの手法が、カーボンフリーな次世代燃料への転換(次世代燃料船の導入)である。

次世代燃料船には様々なオプションがあり、既に実用化が進んでいるものから利用拡大が進む、とみられている。特にバイオメタンやカーボンリサイクルメタンは、既存のLNG燃料技術・インフラがそのまま利用可能なことから、比較的すみやかに置き換えが進むと見込まれている。

一方で日本財団では、将来的には利用時に水しか排出しない究極的なクリーン燃料である水素の利用が拡大すると予想している。そこで、水素を燃料としたゼロエミッション船の開発に焦点を当てた技術開発を「ゼロエミッション船プロジェクト」として支援している。

ヤンマーパワーテクノロジーを代表とするコンソーシアムが実証したのは、パイロット着火式水素エンジン。これは少量のディーゼル油を点火源(パイロット燃料)として、水素燃料と空気の予混合気を燃焼させる方式のこと。これを運転して、本方式の水素エンジンとしては世界最高レベルの水素燃料比率と約500kWの出力を、業界に先駆けて実現した。

今後コンソーシアムは、パイロット燃料としてバイオ燃料を用いることによるゼロエミッション化試験を引き続き実施する一方で、2026年の実証運航に向けて船級認証の取得を目指す。

ヤンマーパワーテクノロジーでは、水素インフラ普及までの船舶運航を考慮して、少量の着火用バイオ燃料と水素の混焼によりゼロエミッション化を図る「パイロット着火式」エンジンと、「火花点火式」による水素専焼エンジンを同型式で開発している。2024年から本パイロット着火式の6気筒水素エンジンによる陸上実証試験を開始し、2026年の実証運航を計画している。

加えて、同型式の火花点火式水素専焼エンジンによる陸上実証試験を同時並行で進め、水素エンジン対応電気推進船舶の普及を図るべく、その先駆けとして2030年頃からの水素エネルギーを基にした内航船舶のゼロエミッション化を目指している。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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