【海外技術情報】VW:音でカンガルーとの衝突を防ぐ「RooBadge」を開発中
オーストラリアの道路では毎年、何万人ものドライバーがカンガルーと衝突している。そこでVWは、象徴的なVWバッジをオーディオ保護シールドに変身させることで、カンガルーとの衝突を防ぐアイテムを開発している。3年前に始めたというこの開発は、世界初の科学的に証明された車両用カンガルー衝突防止装置として、実を結ぼうとしている。
野生動物を相手にする難しさに技術で対応
開発中のアイテムの名前は「RooBadge」。簡単にいえば、カンガルーが反応する特定の音を出すことで、走行中の自動車に近寄らないようにする。そう聞くと単純な装置だと思われるかも知れないが、そこには野生動物が相手だから特有の難しさがあるようだ。
そもそもオーストラリアには、複数の種類のカンガルーが生息している。それぞれの種類は音に対して異なる反応を示すため、単一の音ですべてのカンガルーとの衝突を阻止することはほぼ不可能だという。そこでVWは「RooBadge」に機械学習を使用してGPS座標をカンガルーの分布データと比較。音を種に対して最適化することで、地域ごとに異なる種のカンガルーとの衝突を阻止するようにした。
車両が既知のカンガルー衝突ホットスポットを通過すると、「RooBadge」を自動でアクティブにする車載アプリにリンクしている。車載アプリはクラウドと同期するため、無線アップデートも可能である。
「RooBadge」はカンガルーにとって意味のある音(鳥の警報鳴き声、捕食音、カンガルーが足をトントンと鳴らす音など)と合成音とを混合した音声ベースの抑止に対する独自のアプローチを利用している。
また「RooBadge」は音を散乱させる標準的なスピーカーとは異なり、指向性スピーカーを利用している。これにより効果的に、車両の遥か前方に集中した音を放射できる。
装着が容易なのも「RooBadge」の特徴。現在開発中の「RooBadge」はVW製ピックアップトラック「Amarok」が搭載しているフロントバッジと交換するだけ!迅速かつ便利な取り付けが可能である。
リアルタイムデータ収集を支援するため、VWは動物保護機関がカンガルーとの衝突を簡単に報告できるようにする報告ツールを開発した。これにより新たに報告された衝突ホットスポットを「RooBadge」が認識して起動できる。
「RooBadge」はGPSと遠隔測定データを使用して、衝突ホットスポットの町や都市の外を一定の速度で移動するときに起動する。
そしてVWは、すべてのオーストラリア人がより安全な道路を利用できるべき、との考えから、現在はナンバープレートに取り付けられるユニバーサルな取り付けが可能なバージョンの「RooBadge」を開発中であるという。これが実現すればVWドライバーに限らず、あらゆる車両のドライバーが「RooBadge」を装備できるようになる。
動物の衝突は世界的な問題であり、ヨーロッパと北米全体で最も重大な問題はシカである。そこでVWは海外のパートナーと協力して「RooBadge」を世界中のシカやその他の動物との衝突阻止に適応させようとしている。