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【技術情報】日立建機:1.7tクラスの電動ショベルの開発でディマーグ社と協業

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【技術情報】日立建機:1.7tクラスの電動ショベルの開発でディマーグ社と協業

日立建機が電動ショベル市販化を目指す。日立建機製1.7トンクラスのミニショベルに、アメリカ・シリコンバレーに本社を置くディマーグ社の電動化システム「ENCORE」を組み込み、今年12月までに試作機を開発。2025年4月に開催される展示会で公開予定であり、2027年にヨーロッパ市場での発売を目指す。

小型建設機械は電動化のメリットが大きい

自動車の急速すぎるBEV化は行き詰まりつつあるが、脱炭素(少なくとも低炭素化)という方向性は今後も変わることがないだろう。その手段の一つがBEVであることも、変わりないはずだ。

建設機械でも、同じことが言える。国もカーボンニュートラルに向けた転換を後押ししている。カーボンニュートラルに資するGX建設機械の普及を促進し、建設施工において排出される二酸化炭素の低減を図るとともに、地球環境保全に寄与することを目的として、GX建設機械認定制度を開始した。

先んじているのはコマツだ。2023年12月、電動化建機としてラインナップしている7機種(うち5機種がバッテリー式)で初回認定を取得した。バッテリー式の中心は小型建機だが、コマツは2024年から13トンクラスの電動ショベル「PC138E-11」を国内市場にレンタル機として導入を開始した。クボタも今春からヨーロッパにて、(日本生産の台数限定ではあるものの)電動ミニショベルを発売した。住友建機も早ければ年内に電動ショベルを市販する予定だ。

日立建機のベース機にディマーグ社の電動パワートレインを組み込む

この流れに乗り遅れまいと、日立建機はアメリカのディマーグ社との協業により、電動ミニショベルを開発する。

ベース機は日立建機が提供する、主に都市土木や屋内解体作業などに使用される、1.7トンクラスのミニショベル。そこにディマーグ社の電動化システム「ENCORE」を組み込む。日立建機は開発に必要なベース機の技術情報や電動化への要求仕様などをディマーグ社に提供する。

ディマーグ社は2018年にシリコンバレーに設立された、電気関連ソリューションを提供するリーディングカンパニーだ。同社のエンジニアリング担当副社長のイアン・ライト氏は、テスラ社の共同創業者の1人である。革新的なEV/モビリティソリューションは複数のOEMパートナーに採用されている。

この協業のカギを握る電動パワートレイン「ENCORE」のコンセプトは、2024年初に開催されたCES2024で展示されている。ディマーグ社の技術である高出力かつ交換可能なバッテリーモジュールや熱管理システム、インバーター、モーター、パワーエレクトロニクス、電気自動車(EV)用ソフトウエア、充電ステーションで構成される。試作機は年内に完成の見込みであり、2025年4月にドイツのミュンヘンで開催されるBauma2025で展示される。市販開始は2027年。欧州市場に投入予定である。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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