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【海外技術情報】VWグループ:傘下のグループ企業が固体電池の産業化に向けた契約を発表

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【海外技術情報】VWグループ:傘下のグループ企業が固体電池の産業化に向けた契約を発表

VWグループ傘下のバッテリーメーカーであるPowerCoとQuantumScapeとが、QuantumScapeの次世代固体リチウム金属電池技術を産業化する契約を締結した。産業化に足る技術の進歩とロイヤルティの支払いを条件に、QuantumScapeはPowerCoに技術プラットフォームに基づくバッテリーセルの大量生産ライセンスを付与することとなる。

VWグループ傘下のバッテリーメーカーが次世代固体電池を産業化する

VWグループ傘下のバッテリーメーカーであるPowerCoは、2024年1月、ビル・ゲイツやVWが出資しているアメリカ企業であるQuantumScapeの次世代固体リチウム金属電池の耐久テストを実施した結果を発表した。それによると1000回以上の充電サイクルで問題は発生しなかった。これは航続距離500~600kmのEVにQuantumScapeの次世代固体リチウム金属電池を搭載したと仮定すると、少なくとも50万kmは問題なく走行できることになる。

この耐久テストの結果を経て、2024年7月、非独占的ライセンスの下、PowerCoとQuantumScapeは、QuantumScapeの技術を使用してPowerCoが年間40ギガワット時(GWh)の生産を可能(最大80GWhまで拡張するオプションを含む)契約を締結した。これは年間約100万台のEVに搭載できる量である。この契約はVWグループとQuantumScapeが共同でバッテリーを製造するために以前に締結した合弁事業に代わるものとなる。この契約により、QuantumScapeの最先端技術とPowerCoの工業化=生産能力を強化するパートナーシップが生まれる。

QuantumScapeの技術プラットフォームは、独自の固体セラミックセパレーターをベースとしており、純粋なリチウム金属アノードの使用を可能にする。並外れたエネルギーと電力密度、急速充電、堅牢な安全性プロファイルを実現するように設計されている。

PowerCoのCEOであるフランク・ブローム氏は以下のように述べた。

「当社はバッテリー技術の未来を再定義し、持続可能で最先端のバッテリーセルをお客様に提供したいと考えています。当社はこれまで何年もQuantumScape製プロトタイプセルのテストを行っており、この未来の技術を量産に導入することを楽しみにしています。QuantumScapeの技術は、PowerCoの専門知識とリソースにより、産業規模の生産に移行しようとしています」

QuantumScapeのCEOであるシヴァ・シヴァラム博士は以下のように述べている。

「この契約は当社の固体リチウム金属電池技術を市場に投入するという、当社の長期的な世界的スケールアップ戦略における大きな一歩です。当社の最先端技術とPowerCoの製造および産業化の専門知識とを組み合わせたこの契約は、資本の少ないビジネスアプローチの青写真を確立し、エネルギー貯蔵イノベーションの最前線に当社を位置づけることになります。当社の最初の顧客であるPowerCoと協力することで、この画期的な電池の商業化を加速することができます」

QuantumScapeの個体リチウム金属電池を産業化する取り組みは極めて興味深いが、生産開始の時期は発表されていない。今後の動向をウォッチして行く。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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