【海外技術情報】BMW:ベンチャークライアントモデルを介してDeepDrive社製eドライブの路上テストを実施
BMWはベンチャークライアントモデルとして確立した「BMWスタートアップガレージ」を通じて、ドイツ・ミュンヘンを本拠地にするスタートアップ企業であるDeepDrive社製の2ローターモーターの路上テストを実施すると発表した。
BMWスタートアップガレージはベンチャー製品を活用する仕組み
ベンチャー企業の優れた技術・製品を自社製品に取り入れることで、速やかに優位性を確立することができる。その「ベンチャー企業の優れた技術・製品を自社製品に取り入れる」ための仕組みが、クライアントモデルである。BMWはイスラエルのスタートアップ企業であるMobileye(モービルアイ)と協業することで、市販車にADASをわずか1年程で搭載できた。このスタートアップとの協業を再現性をもって行うために構築されたベンチャークライアントモデルが、BMWスタートアップガレージだ。
「BMWスタートアップガレージ」のプログラムの一部として、BMWジャパンは2020年と2022年に「BMW Startup Garage Pitch Day」というコンテストを開催した。採用されたスタートアップ企業はBMWの専門家によるサポートのほか、プロトタイプの商品化に必要となるエンジニアや各種ツールの支援などを受けることができる。さらに翌年の「BMW スタートアップ・ガレージ」プログラムへの参加に加え、BMWとBMWのサプライヤーとのPoC(Proof of Concept)、BMWとそれ以外の自動車業界メンターとのネットワーキングの機会が設けられる。スタートアップ企業側にとってもメリットが多い仕組みである。
BMWは2015年にこのベンチャークライアントモデルを構築して専門組織により運営している。以降、毎年30社近くのスタートアップ企業と契約して協業しており、このモデルは多くの製造業で取り入れられている。
DeepDriveのインホイールモーター搭載を目指す
今回、BMWが「BMWスタートアップガレージ」で公道テストすると発表したのは、2021年に設立されたばかりのスタートアップ企業、DeepDriveのeドライブ。同社はEVの航続距離を延ばしコストを大幅に削減する、効率的かつ大量生産可能なハブモーターの開発に注力している。
DeepDrive社はこれに先立つ2023年10月、コンチネンタル社とも提携していた。最初のマイルストーンとして両社は「車輪に直接取り付ける駆動部品とブレーキ部品を組み合わせたユニット」を共同で開発する、とした。これはインホイールモーターを指すのだろう。DeepDriveのプレスリリースには「最初のステップでは、油圧ブレーキが駆動ユニットに統合される。2 番目のステップでは、油圧コンポーネントのないドライブレーキシステムを当社のホイールハブ駆動に統合することも計画している」と記載されている。
BMWが搭載を目指すのは、DeepDriveの革新的なコンセプト。2つの電気モーターを1つのユニットに融合した2ローターハブモーターだ。それはエネルギー効率が高く、トルク密度の高い、極めてコンパクトなドライブユニットを生み出す。従来の電気モーターでは、ステーターが内部または外部のローターを動かすが、DeepDriveのデュアルローターコンセプトはステーターが両方のローターを同時に駆動する。ユニットのコンパクトな設計と軽量化により、各ホイールハブに独自の電気モーターを備えたインホイールドライブシステムが可能になる。さらに中央のモーターブロックが駆動力を供給する、従来のドライブシステムにも使用できる、とされている。
BMWグループで、車両コンセプトおよびテクノロジー研究責任者を務めるカロル・ヴィルシック氏は以下のように述べた。
「当社はDeepDriveを発見した最初の大手メーカーであり、IAA2021以来、同社とのコラボレーションを強化してきた。技術はすでに驚くほど成熟している。そのプロトタイプは当社の仕様を大幅に上回った。まったく新しいテクノロジーの初期段階では、珍しいことだ」
BMWはテストリグでの作業の後、概念実証は成功とみなした。次のステップは、路上での検証だ。インホイールモーターは省スペースが可能であり、エネルギー効率が高く、軽量で低コストであるため、幅広いモデルにとって魅力的な選択肢となり得る。