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【海外技術情報】VW:産業用大麻から作られた合成皮革:未来の自動車内装の持続可能な素材

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【海外技術情報】VW:産業用大麻から作られた合成皮革:未来の自動車内装の持続可能な素材

VWはスタートアップ企業のRevoltech(レボルテック)と提携して、産業用大麻をベースにした持続可能な素材を研究開発する。この新素材は2028 年からVW市販車の表面素材として採用される可能性がある。100%バイオベースの大麻から作られる新素材の原料となるのは、地域の大麻産業の残渣である。この新素材は既存の産業プラントで生産できるうえ、自動車での使用期間が終了したらリサイクルまたは堆肥化できる。

産業用大麻の残渣をベースにした新素材をスタートアップ企業と共同開発する

VWが提携するのは、ドイツのダルムシュタットに本拠地を置くスタートアップ企業のレボルテック。2021年にダルムシュタット工科大学からスピンオフして設立された。Revoltechが同社にとっての最初の製品として開発を進めてきたのが「LOVR」という新素材。これをVWの市販車の内装用として採用すべく、両社は共同開発して行く。

VWのブランド技術開発担当取締役のカイ・グリュニッツ氏は以下のように述べた。
「新素材の探求において、当社は様々な業界から新しいアイデアを積極的に受け入れている。技術開発部門では、総合的に省資源を可能にする車両開発のために、革新的、創造的、かつ持続可能なソリューションに重点を置いています」

また、VWブランド戦略責任者のアンドレアス・ヴァリンゲン氏は、
「持続可能な資源の利用は、当社が掲げているACCELERATE戦略の重要な柱。当社の明確な目標は、顧客の要望、持続可能性の要件、企業の利益を融合することである。レボルテックとの協力は、お互いの強みを組み合わせることによりメリットが得られるという好例であり、新機能をできるだけ早く自動車で使用できるようにすることが目標である」と付け加えた。

産業用大麻から作られた100%バイオベースの皮革代替品

産業用大麻をベースに作られる持続可能な皮革代替品「LOVR」には、様々なエンボス加工を施すことができる。

レボルテックのCEO兼共同創設者であるルーカス・フールマン氏は、「LOVR」について以下のように説明した。

「VWと自動車業界向けに開発を進める『LOVR』は革新的な表面素材だ。拡張性があり、自動車部門の持続可能性にとって画期的なものとなるだろう」

ドイツにおいて、2024年4月から大麻が合法化されたことはニュースとして広く報じられたので、ご存知の方も多いことだろう。また、2022年にドイツにおける医療用大麻の収益は約7億9700万ユーロ(約1400億円)もあり、700万人近い患者が医療用大麻を使用している。さらに重要なのは、食品業界向けの大麻だ。大麻の成分(THC)を含有したキャンディー、チョコレート、飲料が、ヘンプベース食品として人気を博している。この食品産業用大麻で使用されるのは、花・つぼみ、であり、残り(茎・枝など)は廃棄される。これを素材として利用しようと試みているのが、レボルテックである。

LOVRは、革フリー、オイルフリー、ビーガン、残渣物ベースの、100%天然物の単層表面素材であり、特に自動車業界に向けて開発されている。大麻繊維とバイオベースの接着剤を特殊な技術で組み合わせ、表面素材へと加工している。この真に循環的な素材は、地域の大麻畑から調達され、素材としての耐用年数が経過した後は完全にリサイクルまたは堆肥化が可能である。既存の産業プラントで製造できるため迅速な拡張が可能であり、大規模生産にも適している。 VW側は既に「LOVR」の用途を特定しており、2028年からの使用が想定されているという。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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