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【海外技術情報】北米クボタ:自律電動多目的作業車「New Agri Concept」をCES2024で世界初公開!

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【海外技術情報】北米クボタ:自律電動多目的作業車「New Agri Concept」をCES2024で世界初公開!

世界最大のテクノロジーイベントであるCES2024において、クボタグループの一員であるKubota North America Corporation(KNA:以下、北米クボタ)が、2030年に向けたビジョンと、イノベーションとテクノロジー統合の総合的アプローチを発表した。当サイトが注目したのは、自律電動多目的作業車「New Agri Concept」である。

*写真はクボタのプレスリリースとFacebookページより転載した。

クボタは農業機械の自動化・無人化のパイオニア

クボタは世界的にみても、農業機械の自動化・無人化におけるパイオニアと言える。日本においてクボタは、2016年にGPS田植機を発売して「農業機械操縦の軽労化」という農業生産における隠れたニーズを掘り起こして大ヒット製品に育て上げると、いち早くトラクターと田植機で無人自動運転を実現した(有人監視下または協調作業)。

2023年6月には世界初となる無人自動運転が可能なコンバイン「アグリロボコンバインDRH1200A-A」を公開して2024年1月からの発売を発表した。その発表会において、同社作業機事業部長の谷和典氏は「これで当社ラインナップに無人自動運転できるトラクター、田植機、コンバインが出揃ったが、技術開発に終わりはない。次はレベル3=遠隔操作・監視が控えている。その実現には、公道走行時の安全性をいかに確保するのか、また通信技術との融合も欠かせない。課題は山積しているが、農業生産者の課題を一緒に解決していくのが当社の使命。今後の開発に期待してほしい」と、筆者の質問に力強く答えてくれている。

「New Agri Concept」は北米クボタにより発表されたものだが、クボタグループによる自律無人運転農業機械開発の進捗が順調に進んでいることを示すものと捉えることができる。

クボタは2020年1月に「コンセプトトラクタ」を発表していた

クボタ本体でも2020年1月、創業130周年を機に、自社の製品発表会にて「コンセプトトラクタ」を発表している。

・無人仕様かつ電動だから可能になった斬新なスタイリング。
・AIが天候や生育状況などのデータから適切な農作業を判断して実行する完全無人運転。
・農作業時にトラクターが獲得したデータを他の機械にも自動で共有。それを一貫管理することで高効率性な農作業を実現。

など、近い将来を見据えた先進技術を多数採用していること、データ収集・共有、その一元管理による高効率営農といった考え方が示されていた。一般には「キャビン(作業者の搭乗スペース)がないトラクター」として話題になったので、見覚えのある方も少なくないはずだ。

やや本題から外れるが「コンセプトトラクタ」の概要を記しておこう。リチウム電池&ソーラーバッテリーの電力で、4輪に備えられたインホイールモーターを駆動する。四輪にはクローラが採用されており、これにより湿田や不整地でも安定した無人作業が可能。前後左右のクローラの回転数を任意に変化させ小旋回が可能、とされていた。

「New Agri Concept」はAIを駆使し自律運転できる電動多目的作業車

今回発表された「New Agri Concept」は、トラクターではなく「自律運転できる完全電動の多目的車両」と表現されている。遠隔操作が可能な小規模経営者向けのソリューションであり、CES2024と同時に公開された動画では、果樹栽培生産での使用を想定していた。直接的な作業としては、除草、耕うんなど、とされているが、薬剤散布や収穫物の運搬にも活用できるだろう。

北米クボタのプレスリリースによると、「New Agri Concept」は6つの独立した駆動モーターを備えている。4輪に各1個と、作業機を駆動するPTOに2個のモーターを使うのだろうか? 標準的な3点ヒッチを装備しており、上掲の一般的な作業を行うための既存の多様な作業機を駆動できる。

興味深いのは充電性能が明記されたこと。6分未満で10%から80%まで急速充電できる、と発表された。ユーザーは充電時間に悩まされず、また車両のダウンタイムは短縮される。電動だから静かな動作が可能であり、住宅に近接した圃場や夜間でも作業が可能である。

動画には「New Agri Concept」が環境データや作物の生育データを収集したり、他の機械とデータを共有している様子はなかったが、当然それら機能も搭載されるだろう。

余談になるが、クボタはスペインのスプレイヤー(農薬散布機)メーカーであるフェデ社を完全子会社化している。フェデ社のスマート散布ソリューション「AIs(アイズ)」はAIを使用して、農薬や肥料の散布量を精密に調整できる。「AIs」は3DカメラとAIを搭載したシステム(機器)であり、トラクターの前方部分に装着してスプレイヤーと接続して使用する。樹高や樹間、病害虫の発生状況を検知して、収集したデータをもとにスプレイヤーからの農薬・肥料の量を精密に調整することで、最大で農薬を40%・肥料を20%削減できる。

参考:Kubota’s Vision for a Connected Future Unveiled at CES® 2024

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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