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【海外技術情報】スカニア:鉱山向け自動運転トラックの商用化を開始。自動運転商用車の商業展開への第一歩を踏み出す。

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【海外技術情報】スカニア:鉱山向け自動運転トラックの商用化を開始。自動運転商用車の商業展開への第一歩を踏み出す。

VWグループ傘下の商用車メーカーであるスカニアが、鉱山向けの自動運転トラックの受注を開始すると発表した。スカニアはキャビンのないタイプの自動運転大型商用トラックのコンセプトモデル「AXL」を発表していたが、受注を開始するのはキャビン付きの40tまたは50tモデルだ。

過去にご紹介したように、VWグループはスカニア・MAN・ナビスター・Plusが提携してレベル4自動運転トラックの世界的商業展開を目指す(https://mf-topper.jp/articles/10003539)ことを発表していた。今回の商用化は鉱山向けである。鉱山は自動運転車両にとって、一般道よりも安全な環境であるうえ、効率的な運用に貢献できるため、最も有望な環境の1つであると長い間考えられてきた。スカニアによる自動運転トラックの社会実装は、自動運転商用車の商業展開に向けた第一歩である。

スカニアはすでに40t自動運転大型ダンプカーの受注を開始しており、近日50tモデルの受注も始めるという。最初のステップはオーストラリアにおける自律採掘ソリューションの販売であり、最初の納品と運用開始は2026年からを予定している。次の市場は、スカニアが採掘分野で大きな市場プレゼンスを持つラテンアメリカになる可能性が高い、とスカニアは説明している。スカニアの副社長兼自律ソリューション責任者であるピーター・ハフマー氏は以下のように述べた。

「これまでの研究開発から製品の市販・発売への移行は、当社にとっても、また自律型重量輸送全体にとっても、大きな節目となります。これは当社がこれまでに市場に投入した中で、最も先進的な製品です」

スカニアはキャビンがないコンセプトモデル「AXL」を発表していた

今回受注を開始する自動運転トラックの前=開発段階に、スカニアはコンセプトモデル「AXL」を発表していた。それは自律走行が可能であることを誇示するためではなかろうが、キャビンがなく、インテリジェントな制御環境により操縦および監視される、とされた。遠隔操縦・遠隔監視を前提とした開発であることが示唆された。公開された動画では、管制室のような場所から車両を操作している様子が示されている。

「AXL」はBEVではなく、内燃機関を搭載すると発表されていたが、燃料は再生可能なバイオ燃料であるとされていた。

自動運転トラックは電動化と持続可能な採掘を実現する

具体的なモデル名は明らかにされていないが、今回受注を開始した自動運転トラックは、スカニアの小型民間トラックをベースに開発されたという。二酸化炭素排出量の削減と生産性の両面で、従来の大型トラックに比べて、総合的に利点が多いとスカニアは主張する。採掘全体のフットプリントを削減でき、適切な現場では運用経費を含めた採掘にかかるコストを削減できる可能性があるという。

「もう1つの利点は、鉱山会社がゼロ排出事業に向けた次のステップをより迅速に実行できることです。従来の重量物輸送トラックと比較して、スカニアの自動運転トラックを使用すると、事業の電動化が容易になります」とハフマー氏は述べた。これは鉱山向けの自動運転トラックの電動化を示唆しているのだろうか?

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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