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【海外技術情報】ジョンディア:自律運転する電動農業機械。果樹園用散布機「Electric GUSS」がアメリカで発売

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【海外技術情報】ジョンディア:自律運転する電動農業機械。果樹園用散布機「Electric GUSS」がアメリカで発売

自動車の電動化と自動化は、今後も着々と進行して行くだろう。農業機械も同じだ。適用しやすい機械から、すでに電動化と自動化が実現している。今回は2024年2月に世界有数の農業機械メーカーであるジョンディアが発売開始をアナウンスした、電動自律運転式の果樹園用除草剤散布機「Electric GUSS」をご紹介しよう。ディーゼルエンジン仕様の自律運転式果樹園用散布機を、電動化した製品である。

農業機械も電動化と自動化が進められている

農業機械においては、生産効率を高めながら同時に環境負荷低減を実現すべく、電動化と自動化が進められている。

本体が動く農業機械で言えば、クボタは公園の緑地管理作業などのために使われているコンパクトトラクターを電動化した「LXe-261」を、ヨーロッパで2023年4月より有償長期レンタルを開始した。トラクターの電動化の課題である連続稼働時間を確保するため、1時間の急速充電で平均3~4時間の連続稼働が可能な大容量バッテリーを搭載。午前中に消費したバッテリーを昼休みに急速充電して午後に作業できるようにした。

海外メーカーでは、アメリカのMonarch Tractorが、主に果樹園で使用する電動自律運転式トラクターを$88,998~(約1,335万円~)で市販している。バッテリー容量は公式サイトにも記載されていないが、最高出力は70馬力で四輪駆動であり、稼働時間は最大14時間(草刈り機を駆動すると8~10時間、車両の動力を利用せず自重で耕起作業を行うディスクハローでは5~7時間)を誇る。さらに無人での自律運転が可能であり、一人のオペレーターが最大8台のトラクターを管理できる。

日本では、農薬メーカーであるバイエルクロップサイエンスと中国メーカーのXAGの日本法人が、2021年6月、世界初の量産型農業用無人車「R150」を発売した。RTKによる制御により、誰でも簡単かつ安全に、正確な運行と散布を実現する。高性能モーターと四輪駆動を採用しており強力なオフロードパフォーマンスを発揮。平地はもちろん山間部の圃場や果樹園等の複雑な地形でも走行でき、最大積載重量は150kgを誇る、とされた。車両のサイズ感は日本の果樹園等にも適しているように見えるが、あまり普及していないように思う。クボタ・ヤンマー・井関農機がトラクターの有人監視下での無人状態での自律運転を実現しているが、完全無人状態での自律運転の社会実装については、アメリカに遅れをとってしまった。

ジョンディアとGUSSが電動自律運転式果樹園用散布機を発表

今回ご紹介するのは、ジョンディア・ブランドを展開するディア・アンド・カンパニーと、同じくアメリカのGUSSとが2024年2月に発表した、電動自律運転式果樹園用散布機「Electric GUSS」。果樹園の防除に使う農業機械である。GUSSはカミンズ製3.7Lディーゼルエンジンを搭載した自律運転式果樹園用散布機「GUSS」などをすでに市販しており、それを電動化したのが「Electric GUSS」だ。

「Electric GUSS」はフル充電時に1シフト中を散布し続けることができるKREISEL製バッテリーを搭載している(バッテリー容量は不明)。GPSのほか、光検出とLiDARセンサー、それに正確なカバレッジを実現する独自技術を組み合わせることで、自律運転を実現する。1人のオペレーターが安全で快適な場所から、最大8台の「Electric GUSS」を操作・監視できる。

「Electric GUSS」は、雑草のクロロフィルを識別して雑草が検出された場所にのみ薬剤を散布する、スポット散布雑草検出システムを搭載している。この技術により薬剤散布量が大幅に削減され、最大90%もの散布量削減を実現するという。これは運用コストの削減、薬剤飛散の削減、持続可能性の向上につながり、さらにはオペレーターの安全性向上にも貢献する。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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