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【海外技術情報】VW:持続可能な非動物性レザーとリサイクル素材という選択

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【海外技術情報】VW:持続可能な非動物性レザーとリサイクル素材という選択

非動物性レザーで作られたステアリングホイールカバー、セルロースで作られたシート仕上げ、またペットボトルから作られたリサイクル素材……VWはこれら持続可能性を高めた素材を、特にこらから拡大して行くBEVのIDモデルの生産に取り入れて行く。エコロジカルフットプリントを削減することを目指して、VW は様々なアプローチから研究を行っており、それらを生産に実装している。その重点分野の一つはインテリアへの非動物性レザーとリサイクル素材の適用である。
TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA)

コーヒー豆の焙煎からでる残渣をレザーにする

現在までに確立された唯一のレザー代替品は、ポリウレタンやPVCといった鉱物油で作られたプラスチックをベースにしたイミテーションレザーであるが、VWグループ・イノベーションのバイオマテリアルチームが開催したブレインストーミングセッションにおいて、コーヒーレザーの活用というアイデアが生まれた。

コーヒー豆を焙煎すると、コーヒー豆を囲む銀色の皮が残留物になる。このシルバースキンはイミテーションレザーのフィラーとして最適である。焙煎の過程で乾燥して蓄積されるため、さらなる処理に適した形で存在する。

生物由来物質の割合が高い非動物性イミテーションレザーは、カーシートやアームレストの試作に使用できる。

ID.Buzz は持続可能な素材のパイオニア

VWは既にID.のインテリアに多くの革新的な素材を使用しており、それらは他のID.シリーズのモデルに徐々に導入される。たとえば、海洋プラスチックやペットボトル(正確には500mlボトル63 本)から作られた代替素材がインテリアに広く使用されている。シートカバーのアッパー素材は収集された海洋ゴミ(10%)と再生PES糸(90%)から構成されるSeaqual®糸で作られている。これにより従来の表面素材と比較して、製造プロセスでの二酸化炭素排出量が32%削減される。ArtVelours Eco®で作られたシートカバー素材の71%はリサイクル可能である。

ID.BUZZのルーフライニングとカーペットも注目だ。ID. Buzzのそれらは100%リサイクルポリエステル製となっている。カーペットの断熱層にも再生プラスチックが含まれている。アンダーボディパネルやホイールハウジングライナーなどのコンポーネントも同様である。リサイクルされた各材料は新材料と同じ高品質と価値基準を満たしている。

VWは環境への影響を考慮した結果、ID.BUZZのドア、ダッシュボード、ステアリングホイールクラスプといった装飾部品へのクロムの使用を廃止した。代わりにバイオベースの結合剤を含むクロム風の液体塗料を使用している。

新しい研究分野:セルロースのシートカバーへの適用

VWはヴォルフスブルク郊外にあるオープンハイブリッドラボファクトリー(OHLF)において代替材料を研究している。BEVの環境バランスを改善するには、循環型経済の確立の重要性がより高まると考えている。それには、リサイクル材料からプラスチックを開発して生物学的サイクルで天然素材を使用することが含まれる。VWのOHLF取締役会の代表者を務めるマルコ・ゲルヌクス博士は次のように述べた。

「当社は循環型経済を確立するため、リサイクル素材を利用した新しいプラスチックの開発を計画しています。分解プロセスを自動化して材料を経済的に分離したいと考えており、それに適する天然材料を選択して行きます」

VWの研究者が可能性を感じているのは、生体材料の数の増加である。それはナタネや針葉樹などの工業用作物だけではない。革新的な生体材料はラボでも生成できる。たとえば現在、純粋なセルロースを研究している。それらは天然の形では、木材などの植物の細胞壁に見られる。実験室では、これを細菌が純粋な形で生成する。この天然ポリマーは非常に安定しており、耐性もある。リサイクルプロセスにも適しており、堆肥にすることもできる。この技術を利用して将来、VWのシートカバーは実験室で製造されたセルロースから作られる可能性がある。既に現在、目的のフォーマットの純粋なセルロースを培養することが可能であるという。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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