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【海外技術情報】ハーレーダビッドソン:ハーレー市販車向けエンジンとして史上最大排気量&最高出力を発揮する新エンジンを発売

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【海外技術情報】ハーレーダビッドソン:ハーレー市販車向けエンジンとして史上最大排気量&最高出力を発揮する新エンジンを発売

ハーレーダビッドソンが同社の市販車向けとして史上最大排気量&最高出力を発揮する新エンジンを発売した。総排気量2,212cc、後輪出力130PSを誇る「スクリーミンイーグル 135ci ステージIV クレート エンジン」がそれだ。ここではその詳細を見て行きたい。
TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA)

ハーレーダビッドソンのエンジンは進化しているのか?

ツインカム88エンジン

モーターサイクルに興味がない方にとっては、ハーレーのエンジンは「代り映えしない空冷大排気量の45度V型2気筒」といった認識だろう。確かにそのフォーマットは変わりないが、ハーレーのエンジンが進化しているのも事実だ。

実際、空冷である必然性のない車両や、大排気量化による排ガス規制・騒音対策が困難な車両に向けては、ハーレーは水冷DOHC V型2気筒エンジンの「レボリューションマックス1250」エンジンを搭載している。もっと言えば(頓挫してしまったものの)大型のEVバイクを市販してもいる。

ハーレーの総本山とも言える空冷Vツインエンジンもまた、進化している。例えば、1999年には従来までのワンカムからカムシャフトを2本にする大改造を行った。ハーレーにとって8代目となる『ツインカム』エンジンがそれだ。これはアメリカ国内の最高速度引き上げに対応して開発された。シリンダー冷却フィンの表面積を拡大、燃焼効率アップを目指した排気バルブの小径化・点火時期制御も行われ、排ガス規制にも対応した。

2017年には再びワンカムに戻した『ミルウォーキーエイト』エンジンが登場した。カムシャフトは1本→2本とされたが、吸排気バルブはシリンダー当たり2本→4本へと変更され、ツインプラグ化が行われた。年々厳しくなる排ガス規制対策として、大排気量化+燃焼効率改善を目指した。

レース部門の技術を投入したエンジンキット

現行(2023年モデル)のハーレー市販車のラインナップにおける最大排気量は1,923cc。先に紹介した『ミルウォーキーエイト117』がそれである。ボア×ストローク=103.5×114mm、圧縮比は10.2:1。

一方でハーレーは、レース部門「スクリーミンイーグル」の名を冠したハイパフォーマンスパーツを多数販売しており、そこにはエンジンキットも含まれている。これはレース技術を投入して開発されたエンジンであり、ここで開発されたスクリーミンイーグルエンジンを量産向けに改良して市販車に搭載する、という流れが出来ている。

ハーレーのレース活動としてはフラットトラックレースが知られているが、現在はMotoAmericaの『Mission King of the Baggers』ロードレースシリーズが人気を集めている。ハーレー&インディアン製のバガーモデル(パニアを搭載した高速ツアラー)がサーキットを走るという、アメリカ人以外には理解しがたいフォーマットだが、そこで開発した技術を投入して開発したのが、今回発売された『スクリーミンイーグル135ci ステージ4 クレートエンジン』である。

今回発売された『スクリーミンイーグル135ci ステージIVクレートエンジン』はハーレーのレース部門が培った技術が投入されているため高性能であるうえ、純正だからサードパーティ製エンジンキットよりも耐久性や整備性、信頼性が高い。適合車両(ハーレーのツーリング系モデル)にボルトインで取り付けるこが可能な親切設計でもある。特別な加工やエンジンマウントの変更の必要がない。ハーレーが提供するCustom Coverageプログラムを通じて販売店で搭載すれば最大2年間のメーカー保証が付帯する。至れる尽くせりのエンジンキットである。

『スクリーミンイーグル135ci ステージIVクレートエンジン』の概要

『スクリーミンイーグル135ci ステージIV クレートエンジン』は高性能コンポーネントの粋として設計・テストされ、ウィスコンシン州メノモニーフォールズにあるハーレーダビッドソンパワートレインオペレーションズで組み立てられる。

『スクリーミンイーグル135ci ステージIV クレートエンジン』は高性能コンポーネントの粋として設計・テストされ、ウィスコンシン州メノモニーフォールズにあるハーレーダビッドソンパワートレインオペレーションズで組み立てられる。

この公道仕様の高性能エンジンには、プレミアムなスクリーミンイーグル・コンポーネントが搭載されている。販売価格は$7,999.95である。最後にハーレーが公表しているパーツ群を記しておこう。

・ 燃焼室への混合気流を最大化するため、スクリーミンイーグルファクトリーレーシングチームのために開発された新しい68mmスロットルボディと、それに対応するCNC機械加工により制作されたインテークマニホールドを装備。
・ スクリーミンイーグルエクストリームCNCポートシリンダーヘッドは充填効率を大幅に向上させる。高性能バルブスプリングがハイリフトカムと協調して高回転域での安定した作動を保障する。
・ スクリーミンイーグルプロビレットカムプレートとオイルポンプは、オイルが高温になった際でも高圧力を供給してオイル圧力の低下を最小限に抑える。
・ 新しい10.7:1 高圧縮鍛造ピストンを装備。
・ SE8-517 ハイリフトカムシャフト、高性能カムベアリング、高性能タペットを装備。
・ 特許取得済みの4.31 インチスチールスリーブシリンダーと新しい4 5/8インチフライホイール (ボア x ストロークは 4.31 x 4.625)。
・ 新しい大容量6.8g/sのインジェクターを装備。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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