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【海外技術情報】ZF:建設機械のCO2排出量をLessからZeroにするドライブトレインの電動化

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【海外技術情報】ZF:建設機械のCO2排出量をLessからZeroにするドライブトレインの電動化

建設業界は急速に進化しており、高度な柔軟性と迅速な製品開発サイクルが求められている。ZFは2023年3月14~18日にラスベガスで開催されたCONEXPO-CON/AGG 2023において、これらの課題に対処するソリューションを展示した。
TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA)

小~中型建設機械では電化が進んでいる

電化の潮流は建設機械にも及んでいる。建設機械は乗用車よりも過酷な環境で稼働している。酷い振動や大量の粉塵に常に晒されるうえ、大型建設機械は充電もままならない環境下で稼働することが少なくないから、大型建設機械については燃料電池や水素エンジンの研究開発が進められている。だから電化への転換が目覚ましいのは小~中型建設機械である。

日本を代表する建設機械メーカーであるコマツは、2008年に世界初となるハイブリッド油圧ショベルを、2020年には電動ミニ油圧ショベルを市販した。またホンダと協力して「Honda Mibile Power Pack」を活用した電化にも挑戦している。コマツによるとCO2排出量がゼロになるだけでなく、「低騒だから作業者への口頭指示が通じやすく、現場が静かだから危険を察知しやすい」「屋内作業でも排気ガスや排熱による影響を気にしなくてよくなった」といったメリットが現場から届いているという。

このような小~中型建設機械の電化が進む背景のなか、ZFはラスベガスで開催されたCONEXPO-CON/AGG 2023において、低排出またはゼロ排出を実現して建設現場での生産性を向上させるソリューションを展示した。

ZFの小~中型建設機械向け電動パワートレイン

ZFは小型建設車両用に「eTRAC ドライブライン システム」を提案している。連続出力が20~60 kWで、48/96/650ボルトの電動モーターに対応。これら車両に必要なゼロエミッションでの駆動を実現する。電気駆動だけでなく、前後のアクスル、インバーター、eDCU (Electric Drive Control Unit)を組み合わせたフルシステムを提供できる。このクラス最高のソリューションは従来のドライブトレインと同じ出力を実現する。

新たに発売したバックホーローダー用「eCD システム」は、パーキングブレーキ、電気モーター、それにインバーターを統合した2速パワーシフトトランスミッションで構成される。ユーザーのニーズに応えるため、作動油圧を操作するePTO(PTOとはPower Take Offの頭文字であり作業機を駆動するために動力を取り出す装置)も提供している。
このシステムは、オプションで車軸を切り離して調整することもできる。最大トルク850Nm、連続出力80 kW までスケールアップできる。ZFの電動セントラルドライブシステムの3つの出力クラス(eCD50、eCD70、eCD90 )が利用可能であり、対象となるアプリケーションのさまざまな車両サイズに対応する。電動セントラルドライブは、ショベル、テレハンドラー、林業機械など、さまざまな車両に適合する。

中型ホイールローダー用には「eTRAC eCD110-210」シリーズを提供している。電気機械式パワーシフトトランスミッションと牽引用eモーター、ePTO、全体のパフォーマンスと電力管理を担う電気駆動制御ユニットで構成される。動作電圧は650Vであり、システムは連続電力120kWまで拡張可能。ePTOは30~70kWの連続電力を確保している。モジュール設計により、このシステムは追加の車両アプリケーションに統合可能であり、電源から独立して駆動できる。このソリューションはバッテリー式電気自動車と燃料電池式電気自動車に適用可能であり、建設機械の将来において重要な役割を果たすと考えられる。

効率化による脱炭素化の実現 – ZF cPOWER 無段変速機 (CVT)

小~中型建設機械は電化を進めている一方で、ZFは大型建設機械の低炭素燃料への移行も急速に成長している市場であると捉えている。中~大型建設機械については「代替燃料の使用が有望でありCO2フットプリント削減に役立つ」としている。水素、eFuels、バイオディーゼルなど、さまざまな燃料が市場に参入しているが、中~大型建設機械においては従来型パワートレインが車両システムアーキテクチャのバックボーンであり続ける、とZFは述べている。
従来型ディーゼルであろうと代替燃料であろうと、ZF「ERGOPOWER パワーシフト トランスミッション」と高効率な「cPOWER」CVT テクノロジーを組み合わせることで、動力源から独立した適切なドライブトレインを提供できる。この両者は大幅な燃料節約を実現する。「ERGOPOWER」は最大15%、「cPOWER」は標準の 「ERGOPOWER」ドライブと比較して最大25%の燃料節約を実現する。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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