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【海外技術情報】コンチネンタル:大型化が進む農業機械が抱える課題を解決する技術を搭載した直径2mを越える農業用タイヤ

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【海外技術情報】コンチネンタル:大型化が進む農業機械が抱える課題を解決する技術を搭載した直径2mを越える農業用タイヤ

コンチネンタルは同社で最大サイズとなるトラクター用タイヤ『VF TractorMaster (サイズ VF900/60R42)』を発売した。直径2,147mmを誇るこのタイヤはドアよりも大きく、重量は450kg、ロードインデックスは189(10,300kg)である。この大型タイヤは大型化が進む農業機械が共通して抱えている課題を解決する技術を搭載している。
TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA)

「より大きく、より速く」が農業機械のトレンドだが……

燃料費、肥料代、生産資材代、人件費……農業生産に関わるあらゆるコストが上昇している。だから農業生産の現場では徹底して効率化が追及されている。複数の圃場の境界を崩して1圃場当たりの面積を拡大する土木作業(合筆と呼ばれる)が行われるのは、農業機械をなるべく真っ直ぐ(転回させず)作業させるため。転回する時間や燃料さえ惜しいのだ。

農業機械が大型化しているのも効率化のためだ。一度に作業できる面積が広がれば何度も往復する必要がないからだ。より大きな作業機をけん引するには、本体(例えばトラクター)の大型化が必須なのだ。

日本国内で多く売られているトラクターは40馬力程度だが、圃場面積が広いアメリカでは200馬力・300馬力が当たり前である。そのエンジン排気量は9.0Lほど、車両重量1万3,000 kgなどという大型トラクターが高速で作業することで、競争力の高い農作物が生産されている。このサイズにもなるとトラクターの価格はフェラーリを数台買えるほどに高価だが、効率化によるメリットが上回るのだろう。

ところが農業機械が大型化すると車両重量が増える。この車両重量の増加が農業生産に悪影響を及ぼす。タイヤにより土壌が踏み固められて根が伸びることができず、作物の生育を阻害する。効率を高めるための農業機械の大型化が生産効率を悪化させるという、本末転倒としか言いようのない事態に頭を悩ませている農業生産者が少なくないのだ。

大型タイヤでも土壌圧縮を緩和するVFテクノロジー

そんな大型農業機械が抱える課題を解決するとして発売されたのが、『VF TractorMaster (サイズ VF900/60R42)』である。コンチネンタルの独自技術『VFテクノロジー』を搭載している。

残念ながら『VFテクノロジー』の詳細は明かされていないが、それはベルトとビードの形状により堅牢性と耐久性を確保しながら、同時にビード領域とサイドウォールには柔軟性を与えるコンチネンタルの独自技術である。サイドウォールに使われている素材はエヌフレックスと呼ばれる特別なナイロン素材。伸縮性が優れていながら耐久性、それに衝撃吸収性が高い。

これにより『VFテクノロジー』を搭載したタイヤは低空気圧での走行が可能となり、タイヤの接地面積を拡大して土壌圧縮を軽減することができる。

『VFテクノロジー』を搭載したタイヤは標準タイヤと同じタイヤ空気圧で40%高い荷重で、あるいは同じ荷重であれば40%低いタイヤ空気圧で駆動できるという。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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