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【海外技術情報】MANエンジン:プレチャンバースパークプラグを備えたターボチャージャー付き天然ガスエンジン

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【海外技術情報】MANエンジン:プレチャンバースパークプラグを備えたターボチャージャー付き天然ガスエンジン

燃費を向上させるには、混合気の燃料比率を低くすれば良い。ところが混合気の燃料比率が低くなると、燃焼に不具合が生じる。そこで考え出されたのがプレチャンバースパークプラグだ。ここでは、MANエンジンが市販する、プレチャンバースパークプラグを備えたターボチャージャー付き天然ガス燃料定置式エンジンをご紹介しよう。
TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA)

MANエンジンは現行の『MAN E3262』、『MAN E3268』、『MAN E0836』、それに『MAN E0834』などにターボチャージャー付き天然ガスエンジンをオプションとして提供しているが、それに加えて燃焼室にプレチャンバースパークプラグを備えた『MAN E3872』もオプションとして提供している。

MANエンジンが誇る互換性の高さを活かすことで、前述の12気筒、8気筒、6気筒、それに4 気筒エンジンを備えた熱電併給プラント(CHP)を、希薄燃焼プロセスを使用したプレチャンバースパークプラグ仕様に改造することもできる。これにより最大で20%の水素を混合した水素含有燃料での運転が可能となる。

プレチャンバースパークプラグを備えたターボチャージャー付き定置式天然ガスエンジン『MAN E3872』

『MAN E3872』は定置式の天然ガス燃料エンジンである。農業、地方自治体やホテル、病院から工業プラントまで、幅広い用途で使用されている。総排気量は29.6L。4ストロークV型12気筒、ボア×ストローク=138 ×165mm。高効率なシングルターボチャージャーを搭載しており、最高出力は735kW。50 Hzでの有効機械効率は44.0%を誇る。

『MAN E3872』のプレチャンバースパークプラグ

プレチャンバースパークプラグを搭載するのに、エンジン本体を改造する必要はない。点火時期に関するソフトウェア調整と必要エネルギーの削減により、より強力でない点火制御ユニットが必要になる場合がある。

MANエンジンは、特に低NOX用途では、プレチャンバースパークプラグは従来式スパークプラグと比較してメリットを提供できる、としている。プレチャンバースパークプラグの明らかな利点は、耐用年数が長いことであり、これは特に点火エネルギーが低いことが影響している。MANエンジンのエンジニアリング責任者であるWerner Kübler氏は以下のように述べた。

「MANエンジンによる検証の結果、プレチャンバースパークプラグを使用することで、低NOx用途での耐用年数を倍増できることがわかりました。これはメンテナンスコストの削減という点で、ユーザーにとって明らかなプラスとなるでしょう」

もちろんプレチャンバースパークプラグ仕様のエンジンは、より優れた燃焼品質を提供する。プレチャンバースパークプラグには、主燃焼室と接続する通路(flame-jet)が放射状に配置されている。圧縮工程においてピストンが上昇すると、ガスと空気の混合気がflame-jetを通ってプレチャンバーに入り、点火される。主燃焼室内の混合気は、プレチャンバーから逃げる高エネルギー火炎ジェットにより、より良く点火され、希薄混合気でも安全に点火する。

プレチャンバースパークプラグのもう1つのメリットは、点火条件の点で柔軟性が高いことである。プレチャンバースパークプラグは従来式点火プラグよりも混合気の点火をより適切に制御できるため、滑らかさと滑らかさが向上する。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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