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【海外技術情報】VWグループオブアメリカ:車両軽量化と材料リサイクルに関する研究成果を発表

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【海外技術情報】VWグループオブアメリカ:車両軽量化と材料リサイクルに関する研究成果を発表

VWグループオブアメリカ(以下、VWGoA)が、電動モビリティと持続可能な交通イノベーションの研究を加速するための、自動車用軽量複合材料、リサイクル可能な内装材料、EVワイヤレス充電における画期的な研究成果を発表した。
TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA)

VWGoAは電動モビリティと持続可能な交通イノベーションをさらに加速するため、アメリカでの自動車研究を強化しており、大学や連邦研究施設との共同研究開発を続けている。主要なユニットの1つが、テネシー州にあるVWイノベーションハブ。テネシー大学(以下、UT)およびオークリッジ国立研究所(ORNL)と協力して、応用材料科学を研究している。

2020年にオープンしたVWイノベーションハブは、ノックスビルのTUリサーチパーク内にある。ここはORNLを含めた研究施設が集中していることから「マテリアルバレー」と呼ばれる。VWの研究者、UTの教員と大学院生、ORNLの科学者が強力して、応用材料研究の研究と共同イノベーションを推進している。VWGoA社長兼最高経営責任者(CEO)のパブロ・ディ・シ氏は以下のように述べた。

「アメリカでより多くの知識を集中させることはVWの成長戦略の一部。VWイノベーションハブに様々な分野や組織に所属する科学者や研究者を集めて、社会実装できるテクノロジーを開発し市場に投入します」

AI によって最適化された材料構造によりEVの航続距離を向上

VWの研究者はEVの航続距離を伸ばすため、車両重量を軽減するための新しい材料構造に取り組んでいる。パイロットプロジェクトに選択されたのは、EVバッテリーパックを収容して物理的衝撃から保護するためのスチールフレームである。

UTの高性能計算クラスター上で最大数百万のパラメーターを使用した深層学習アルゴリズムを実行することにより、チームは小さなピラミッド形をしたモジュール式の繰り返し構造を開発した。この構造は液体樹脂から3Dプリントすることができ、自身の重量(0.15ポンド=68g)の3万倍を保持できる。この構造を採用して新たに作成されたフレームは、従来構造比で最大60%軽量にできる。耐久性テストでは、エネルギー吸収において従来のスチールフレームを上回り、軽量でありながら超堅牢な代替品として機能する可能性がある。

リサイクル可能な自動車内装部品用の紙ベースの材料

再生可能炭素センターのチームは、車内のプラスチック部品に代わる、リサイクル可能な代替品を開発している。彼らの焦点は紙。セルロース繊維で強化された熱可塑性プラスチックを予備成形およびホットプレスして耐久性のある内装部品を製造する方法に関する特許を取得した。

この紙ベースの複合材料はリサイクル可能なだけでなく、バックリットやアンビエント照明を含め、様々なインテリアの形状やサイズに変換することもできる。また様々なテクスチャや色を追加することで、インテリアデザイナーが柔軟性と創造的な自由を享受できるようにした。VWブランドは紙ベースの内装部品を将来のモデルラインに組み込む機会を検討している。

軽量車両部品用の新しい繊維複合材料

ガラス繊維強化プラスチックの一種であるシートモールディングコンパウンド(SMC)を使用して2020年式VW「アトラス」のリフトゲートを再現することで、軽量材料の研究を開始した。新しいリフトゲートは、従来の金属ベースのバージョンより13ポンド(5.8967kg)軽い。これは35%以上の軽量化となり、EVの航続距離を伸ばすことができる可能性がある。さらに代替複合材を採用したリフトゲートは従来品と同じ組み立て順序を採用できるため、これらのコンポーネントは大量生産にも対応する。

この研究の画期的な成果は既に車両生産に活かされている。ベントレーとランボルギーニは、これら新素材と成形プロセスをベントレー「コンチネンタル」とランボルギーニ「アヴェンタドール」に採用した。研究チームはピックアップベッドとより頑丈なコンポーネントによる軽量化を検討する。

高出力ワイヤレスEV充電コンセプト

充電速度と安全性を最適化するために、炭化ケイ素素材を使用した独自のコイルと充電パッドの設計で特許を取得した。彼らの目標は、ガレージに自動車を駐車するのと同じくらい簡単かつ快適にEVを充電できるようにすること。

炭化ケイ素インバータを使用した初期試験で、このプロトタイプシステムは高効率を示した。車両のパワーエレクトロニクスにおけるVWの専門知識、高出力ワイヤレス充電におけるORNLの知見、それにUTが持つパワーエレクトロニクスの最適化に関する知識を利用して、充電電力レベルを以前の6.6kWから最大120kWにまで高めた(目標は300kW)。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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