【海外技術情報】マーレ:SCT電動モーターとMCT電動モーターの長所を組み合わせた「完璧なモーター」
ドイツ・シュツットガルトに本社を置くティア1自動車部品サプライヤーのマーレが、SCT電気モーターとMCT電気モーターの利点を組み合わせた、新しい電気モーター用技術キットを開発した。マーレが主張するこの「完璧なモーター」は永続的な高いピーク出力、非接触による磨耗のない電力伝送、そしてレアアース不使用、さらに高効率を兼ね備えているという。
TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA)
ドイツはミュンヘンにて2023年9月4日から10日まで開催されるIAA国際自動車見本市にて、マーレが興味深いプレゼンテーションを行った。マーレ・グループの経営委員会会長兼最高経営責任者(CEO)のアーント・フランツ氏は「電気モーター用のこのユニークな『テクノロジーツールボックス』により、当社はあらゆる車両クラス、用途、ブランド哲学に合わせてカスタマイズされた電動化ソリューションを顧客である自動車メーカーに提供できるようになります」と述べた。
MCTとSCTのメリットを合わせ持つ「完璧なモーター」
レアアースを使用せずに非接触で動作するMCT(Magnet-free Contactless Transmitter;マグネットフリー非接触トランスミッター)電気モーターと、耐久性に優れるSCT(Superior Continuous Torque;優れた連続トルク)電気モーターとは、現在のマーレの最新技術である。
MCT電気モーターはレアアースを使用しない。だから生産が環境に優しいだけでなく、コストと、原材料の安全面でもメリットをもたらす。ほぼすべての動作点において効率的でもある。MCTは実際の道路交通で頻繁に使用される領域で、効率に関するメリットを最大限に発揮する。またモーター内部の回転部分と固定部分との間における電流伝達が非接触で行われる。そのため摩耗が発生せず、耐久性が高い。メンテナンスフリーであり、幅広い用途に用いることができる。
SCT電気モーターにより、マーレは高耐久性を誇る電気モーターを製品ラインナップに組み込むことに成功している。優れた連続トルクを誇るSCTモーターは高出力で無制限に動作する。非常にコンパクトで軽量な設計にもかかわらず、ピーク電力の93~100%で連続して作動できる。この技術的飛躍は、新しい冷却コンセプトにより可能になった。革新的な一体型オイル冷却により、電動モーターの堅牢性が高まり、発生した廃熱を車両全体のシステムで利用できる。
マーレは2022年に、この2つのモーターのコンセプトを組み合わせることができる、と述べていたが、それをこのIAAで『テクノロジーツールボックス』と名付けて展示したようだ。マーレは現在のところ『完璧なモーター』と呼んでおり、永続的な高いピーク出力、非接触による磨耗のない電力伝送、レアアース不使用、最大の効率を兼ね備えている、としている。詳細が発表されたら続報をお届けしたい。