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【海外技術情報】ワシントン大学:大きさ約19mm。バッテリー不要の小型自動運転ロボット『MilliMobile』

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【海外技術情報】ワシントン大学:大きさ約19mm。バッテリー不要の小型自動運転ロボット『MilliMobile』

アメリカ・ワシントン大学の研究者が、周囲の光または電波だけで動く小型の自動運転ロボット『MilliMobile(ミリモバイル)』を開発した。大きさはペニー(1セント硬貨)=約19mmで獲得したエネルギーで無限に稼働するという。同校のプレスリリースを翻訳してご紹介しよう。
TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA)

電池不要の小型移動ロボット『MiiliMobile』

センサーを搭載した小型の移動ロボットは、ガス漏れの発見や倉庫における在庫の追跡などのタスクを実行できる可能性がある。しかしロボットの移動には多量のエネルギーが必要であり、一般的な電源であるバッテリーは寿命を制限するし、使用後の電池が環境上の懸念を引き起こす。そこで研究者達はセンサーを昆虫に貼り付けたり、充電マットを近くに置く、ロボットにレーザーで電力を供給する、といった代替案を検討してきた。それぞれに欠点がある。昆虫にセンサーを張り付ければ虫が徘徊する。充電マットを設置する方法では移動範囲を制限する。レーザーは人の目を火傷する可能性がある。

そこでワシントン大学の研究者らは、周囲の光または電波だけで動く小型の自動運転ロボット『ミリモバイル』を開発した。ソーラーパネルのようなエネルギーハーベスタ(ソーラーセル)と4つの車輪を備えており、大きさは1ペニー(1セント硬貨)=19.05mmで、重さはレーズン一粒ほど。そして曇りの日であっても10mを1時間で移動できる。この小さなロボットはコンクリートや固まった土などの上を走行し、自重の3倍近い重量の機器(カメラやセンサーなど)を運ぶことができる。光センサーを使用して光源に向かって自動的に移動するため、集めた電力で無限に動作する。研究チームは10月2日にスペインのマドリッドで開催されるACM MobiCom 2023カンファレンスで研究成果を発表する。

論文の共同執筆者でありポール大学の博士課程の学生(コンピュータサイエンス&エンジニアリングスクール所属)であるカイル・ジョンソン氏は以下のように述べた。

「複雑なプログラムを小さなステップに分割する、断続的コンピューティングからインスピレーションを得ました。これにより電力が非常に限られたデバイスであっても、エネルギーが利用できる限り段階的に動作できるようになります。『ミリモバイル』では、この概念を動作に適用しました。ロボットのサイズと重量を削減したため、移動に必要なエネルギーはわずかで済みます。そして動物が一歩を踏み出すのと同じように、私達のロボットは小さなエネルギーパルスを使って車輪を回転させて、段階的に動きます」

研究チームは公園、屋内の水耕栽培農場、オフィスなど、屋内と屋外の両方の環境下で『ミリモバイル』をテストした。その結果、非常に暗い環境下、たとえばキッチンカウンター下の照明だけでも、速度はかなり遅くなるものの、少しずつ進むことができた。そのペースであっても継続的に進むことができれば、複数のロボットを活用することで、他のセンサーではデータ生成が難しいエリアで活用できる可能性がある。

『ミリモバイル』は搭載されたセンサーと小型コンピューティングチップを使って、自らを操縦することもできる。これを実証するため研究チームは、光センサーを使用して光源に向かって移動するようにプログラムした。論文の共同執筆者であり、ワシントン大学アレンスクール博士課程の学生であるザカリー・エングルハルト氏は以下のように述べた。

「IoTセンサーは通常、特定の場所に固定されています。ところが私達は領域を超えて、空間全体の複数地点でデータをサンプリングして、その環境の詳細なビューを作成できるロボットセンサーを作成しています。それがたとえば、ロボットが湿度や土壌水分を追跡しているスマート農場であっても、機器の故障を見つけるために電磁ノイズを探している工場であっても、使うことができるロボットセンサーです」

研究チームは『ミリモバイル』に光、温度、湿度センサーとBluetoothを装備して、200m以上の距離でデータを送信できるようにした。将来的には、他のセンサーを追加して、これらのロボットの群れの間でデータ共有を改善する予定であるという。

参考:ワシントン大学プレスリリース

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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