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【技術情報】丸山製作所:世界初!小型作業機用2ストローク水素エンジンの安定運転に成功

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【技術情報】丸山製作所:世界初!小型作業機用2ストローク水素エンジンの安定運転に成功

1895年に創業した丸山商会を源流とする丸山製作所は、日本随一の老舗小型作業機メーカーである。その丸山製作所が、世界で初めて小型作業機用2ストローク水素エンジンの安定運転に成功したという。

温室効果ガス(CO2)排出削減は、あらゆる産業が解決すべき中長期的な課題である。農林業においても、それは変わらない。農業分野のプロが使用する小型作業機械(チェンソー、手持ち式の草刈機(刈払機と呼ぶ)、ブロワーなどの屋外で使われる小型の作業機のこと。Outdoor Power Equipment :OPE)の動力には現在、小型エンジンが搭載されている。これをゼロエミッション化するため、農業分野では様々な取り組みが行われている。

一般的にはOPEにおいても、CO2排出削減=バッテリー+モーターという図式による電化が進められており、プロ向け以外の機種においては普及しつつある。電動であれば、混合燃料を作ったり、エンジンに関連した各部のメンテナンスしたり、といった作業の手間が省ける。農場などの作業場所と住宅との近接化が進んでいることも、動力から発生する騒音がない電動OPE普及の後押しとなっている。

だが、プロ向けOPEは別物である。プロ向けOPEは、高負荷での長時間作業に耐えられねばならない。現在のバッテリー性能では、バッテリー+モーターによる電動OPEでは、プロが求める過酷な使用条件に応えることができない。

そこで丸山製作所が挑んだのが、OPE製品に搭載可能な小型2ストローク水素エンジンの開発。OPE用エンジンとして世界で初めて、100%水素燃料での安定運転に成功したという。OPEのエンジンは、作業時に、エンジンが横や上下逆さまになることもあるが、今回、開発した小型2ストローク水素エンジンは、そうした仕様環境下でも問題なく作業できたという。

OPE用小型2ストローク水素エンジンの特長

当サイト読者であれば、2ストロークエンジンのメリットを理解していることだろう。4ストロークエンジンに比べて、2ストロークエンジンはシンプルな構造であり、軽量コンパクト、そしてハイパワーである。だから2ストロークエンジンは、作業者が手で持ったり背負ったまま作業りするOPEに最適である。また、排気弁や吸気弁といった動弁系を持たないため、メンテナンス性にも優れている。一方で、2ストローク水素エンジンの課題は、燃焼室内の残留ガスが火種となる自着火現象が発生するプレイグニッションである。

そこで丸山製作所では、プレイグニッションを防止するために、水素燃料をエンジンに噴射する場所とタイミングを見直した。具体的には、圧縮前の低温環境の燃焼室へ燃料を導入することにした。また、オフセットシリンダを採用することで、高温の燃焼済みガスの残留を低減し、さらに低温の空気のみで掃気工程を行うことにより燃焼室内の温度低減を実現した。これにより自着火現象による不具合を防ぎ、水素燃料での安定運転が実現した。

さらに、潤滑オイルはクランクケースの別通路からクランクシャフトへ供給する構造とした。最も潤滑を必要とするコンロッドのクランクシャフト側のベアリングに直接オイルを供給する構造となっており、現行エンジンと同等の8,000rpm以上の高速運転も可能であるという。

この世界で初めて安定運転が確認されたOPE用小型2ストローク水素エンジンは、丸山製作所の量産タイプの排気量80ccの2ストロークエンジンをベースに開発された。今回確認したのは、テストベンチ上で水素は外部設備から供給した。

今後はカセットボンベ方式の採用と部品の小型化を図り、実際に屋外作業が可能な試作機を作成予定であるという。小型2ストローク水素エンジンは、プロ向けOPEのカーボンニュートラル実現の切り札になる可能性を秘めている。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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