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【技術情報】やまびこ: 2ストロークエンジン搭載シリーズハイブリッドと電動パワーユニット「DC50V」で農林業用作業機の脱炭素化に貢献する

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【技術情報】やまびこ: 2ストロークエンジン搭載シリーズハイブリッドと電動パワーユニット「DC50V」で農林業用作業機の脱炭素化に貢献する

やまびこは、当サイト読者には聞き慣れない社名かも知れないが、農林業関係者の間では知らぬ者はいない日本有数の老舗作業機メーカーだ。戦後復興期に創立された共立農機と新ダイワ工業という二社が合併して2008年に生まれたのが、やまびこである。小型屋外作業機械・農業用管理機械・一般産業用機械という3事業領域を有しており、国内のみならず、北米、欧州、アジア、オセアニア等と、グローバルに事業を展開している。本稿では、やまびこが進める脱炭素化の取り組みのなかから、特に注目すべき二つ、「小型2ストロークエンジン搭載シリーズハイブリッドシステム」と「電動パワーユニット『DC50V』」について、ご紹介したい。

2ストロークエンジンを搭載したシリーズハイブリッド、電気で作業機を動かすパワートレイン

農林業分野においても、脱炭素化は中長期的な課題である。前回記事でご紹介した株式会社丸山製作所は、作業機用「小型2ストローク水素エンジン」を開発しているが、やまびこは複数のアプローチで脱炭素化に挑んでいる。

そのうちの一つが「2ストロークハイブリッドパワーユニット」である。2ストロークエンジンにバッテリーとモーターを搭載することで、充放電可能なシリーズハイブリッドシステムを構築した。搭載するのは2ストローク単気筒エンジン。2ストロークエンジンの特徴である高出力とメンテナンス性をいかしながら、汎用4ストロークエンジンを越える燃費と排出ガス規制をクリアする環境性能を実現している。排気量は50.8cc、ボア×ストローク=34×28mm。最高出力は2.3kW(エンジン最高出力3.0kW)。燃料供給は電子制御インジェクション方式。これによりラジコン草刈機や運搬車をはじめとした多様な小型作業機械を電動化しようとしている。

それと並行して、ドローンに特化した「水平対向2気筒2ストロークエンジンパワーユニット」も開発している。農業分野でも電動ドローンは急速に普及しており、特に農薬散布用ドローンは省力化に資する技術として期待されているが、電動ドローンの飛行時間とペイロードが普及のネックとなっている。電動ドローンよりも長時間飛べて多くの薬剤を積むことができる、それでいて無人ヘリよりも小回りが利く……そんなドローンが求められている。

そこで開発しているのが「水平対向2気筒2ストロークエンジンパワーユニット」。軽量&コンパクト、ハイパワー、それに低振動であることを目指して、水平対向レイアウトを採用した。こちらもバッテリー&モーターを搭載している。これにより環境負荷を低減しつつ、電動ドローンの課題である長時間飛行、ペイロード増大への可能性を広げて行く。現状のエンジンは排気量50.1cc、ボア×ストローク=42×36.2mm(発電能力1.0kW)、最大システム出力3.0kW。

また、やまびこは、e-fuel、ETG燃料、MTG燃料に対応したエンジン開発も進めており、これまで培ってきたエンジン技術のブラッシュアップを続けながら、カーボンニュートラルを目指している。

「DC50V」で小型エンジンを置き換える。社外にも提供することで小型農業機械を脱炭素化する

続いてご紹介するのは、やまびこが市販している「DC50V」電動パワートレインに関する新しい動き。一般向けのチェンソーや草刈機(刈払機と呼ぶ)といった手持ちの屋外作業機は、ある程度、電化が進んでいる。ところが、プロ仕様は容易ではない。高負荷下での長時間使用に、現在のバッテリーでは対処できないのだ。そのため、現在でもプロ仕様の作業機は、ほぼ例外なく小型エンジンを搭載している。

ところが、それをハイパワーの電動パワーユニット「DC50V」に置換することに、やまびこは挑んでいる。「DC50V」バッテリーは、やまびこが「プロが満足するバッテリーツール」をコンセプトに掲げて開発した強力で高信頼性を誇るバッテリー。筆者が調べた範囲では、既存の市販バッテリーは最大40V(公称電圧36V)だが、やまびこは50V。これによりプロの使用に耐え得る性能を与える。

やまびこは既に「DC50V」を採用した製品のラインナップ化を進めているが、さらに「DC50V」バッテリー+モーターを組み合わせた電動パワーユニットを他社に提供して、協業を目指している。

上に掲載したのは、株式会社ニッカリが開発しているイチゴの「高設栽培用管理機」。管理機の上部に搭載されているのが「DC50V」電動パワーユニット。高設栽培とは、農業従事者の作業性を高めるために、地面から1mほどの高さに培地を設置する栽培方法で、主にハウスのイチゴ栽培で採用される。これまでの小型エンジンから「DC50V」電動パワーユニットに換装することで、効率的かつクリーンに耕うんできる。モーター駆動は高トルクだから、高負荷運転でもトルク低下が起こりにくいというメリットもある。

吉徳農機株式会社が開発しているのは「歩行溝切機」。米の栽培では、多くの地域で、一時的に田んぼから水を抜いて田んぼを乾かす中干しという作業を行う。この中干し時の排水効率良く行うために田んぼに溝を切るために使用する作業機が「歩行溝切機」。これも駆動をエンジンから「DC50V」への置き換えを模索している。

家庭用やプロ向け小型工具は、バッテリーを共有した電動製品のラインナップ化が進んでいる。やまびこは、プロ向け作業機や小型農業機械で、「DC50V」電動パワーユニットの共有化を目指している。それが実現すれば、やまびこにとっては「DC50V」の大量生産が可能になる。協業するメーカーにとっては、大きな負担なく脱炭素化が実現する。ユーザーは、「DC50V」を共有した作業機を購入することで、二つ目、三つ目の機械は50Vバッテリーなしの作業機を購入することで、安く機械が手に入る。「DC50V」の他社への供給によりやまびこが目指しているのは、そんな三方良し、の解なのだ。



*本稿は農業メディア「スマートアグリ」と「アグリジャーナル」に掲載した記事を加筆編集して掲載した。

「第13回農業WEEK」で見つけた注目農業ソリューション【後編】,スマートアグリ , https://smartagri-jp.com/smartagri/7717

“エンジンで発電”し、作業機械を効率的に作動! ドローンの連続長時間運転も可能に, アグリジャーナル, https://agrijournal.jp/renewableenergy/74420/

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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