開く
NEWS

【海外技術情報】GM:コマツの超大型ダンプトラック向けの水素燃料電池共同開発とアメリカ最古のトラックメーカー向けに水素燃料電池供給を発表

公開日:
更新日:
【海外技術情報】GM:コマツの超大型ダンプトラック向けの水素燃料電池共同開発とアメリカ最古のトラックメーカー向けに水素燃料電池供給を発表

ホンダとの量販価格帯中小型EVの共同開発が中止とあいなったGMだが、水素燃料電池の協業を積極的に進めている。1897年創業のトラックメーカーであるオートカーとの協業と同社への「HYDROTEC」燃料電池の納入を発表したが、それに続いてコマツとの水素燃料電池の共同開発契約締結を発表した。

GMとコマツが超大型ダンプトラック向け水素燃料電池を共同開発

ゼネラルモーターズとコマツは、世界で最も売れている超大型運搬トラックであるコマツ「930E」鉱山トラック用に、水素燃料電池パワーモジュールを共同開発することを発表した。燃料となる水素はエネルギー密度が高いため、車両の積載量を減らすことなく多量のエネルギーを効率的に搭載することができる。また燃料補給を迅速に行うことができるため、水素燃料電池はディーゼルエンジン搭載車両の電化に最適である。

コマツによると、鉱山向けのダンプトラックは一つの鉱山のみで製品寿命を終えることが多く、水素充填インフラを整備する際には、鉱山に導入する水素燃料電池車両の台数に合わせることができ、効率的であるという。なお、「930E」の積載能力は約290トンである。GMでグローバルHYDROTEC事業担当エグゼクティブディレクターを務めるチャーリー・フリーズ氏は以下のように述べた。

「GMでは燃料電池がゼロエミッションの未来において不可欠な役割を果たし、より重量のあるアプリケーションの電動化に貢献できると信じています。鉱山用トラックは、あらゆる産業で使用される車両のなかで最大かつ最も高性能な車両の一つであり、その厳しい用途にゼロエミッションの推進力を提供するには水素燃料電池が最適であると考えています」

コマツは中期経営計画において、2030年までに製品使用時および生産における二酸化炭素排出の50%削減(対2010年比)を、そしてチャレンジ目標として2050年までにカーボンニュートラルを達成することをそれぞれ掲げている。GMの目標は、2040 年までに製品と事業の両方でのカーボンニュートラルを掲げている。

GMとコマツは2020年代中頃に、アリゾナ州にあるコマツのアリゾナ試験場においてGMのHYDROTEC水素燃料電池を搭載したプロトタイプの試験を計画している。このプロトタイプは2メガワット以上のHYDROTEC水素燃料電池を搭載する予定である。

GMはAutocarにHYDRACETパワーキューブを提供する

ここまでに紹介したコマツとの共同開発に関するリリースは、2023年12月13日に発表された。GMはその数日前、アメリカ最古のトラックメーカーであるAutocarとの提携を発表していた。チャーリー・フリーズ氏は以下のように述べている。

「GMのUltiumプラットフォームのようなBEV向けパワートレインは、乗用車の電化には最適なソリューションですが、Autocarのクラス8トラック、ゴミ収集車、ターミナルトラクターなどの大型車両には、大エネルギー運搬能力と迅速な給油時間を可能にする堅牢なソリューションが必要です。私達はエネルギー消費量が最も大きい最大の車両向けに二酸化炭素排出ゼロのソリューションを実現したいと考えています。それに最適なのは燃料電池です」

これらから共同開発されるトラックには、GMの燃料電池ソリューションである HYDROTEC水素燃料電池(パワーキューブ)が搭載される。HYDROTECパワーキューブはコンパクトであり、パッケージ化が容易、拡張性があり、貨物輸送、航空宇宙、機関車から発電まで、さまざまな業界の車両とアプリケーションを電化できる。

最初の開発車両はアラバマ州バーミンガムのAutocarトラック工場で2026年に生産が開始される予定。HYDROTECテクノロジーを搭載した車両は、Autocarにより受注生産され、顧客に直接販売される。共通のアーキテクチャを共有するセメントミキサー車、ロールオフトラック、およびダンプトラックが最初に製造され、次にゴミ収集車とターミナル トラクターが続く。

HYDRACETパワーキューブは約300個のセルを内包しており、熱および電源管理システムとコールドスタート機能を最適化して、寿命と性能を制御する。HYDROTECパワー キューブは77キロワットの電力を供給し、従来のディーゼルエンジンよりも遥かに静かである。複数のパワーキューブを車両内に配列することで、さらに高い出力を得ることができるという。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

川島礼二郎の海外技術情報

PICK UP