サスペンションをめぐる、12の素朴な疑問
Ask for engineer
Q5:アフターマーケットホイールの解説などで、タイヤ&ホイールが重いと路面追従性の確保に不利、軽量化こそ最良の選択─というような記載を見ますが、そんなに単純なものなのでしょうか? むしろ重量がある方が、動きが落ち着いていそうで、振動にも有利なようにも思えるのですが……
タイヤとホイールに代表される“ばね下重量”の軽減が性能面において有利に働くことは間違いない。ゆえにモータースポーツではこのことが常識とされているわけだが、乗り心地や静粛性という性能以外の要素が求められる乗用車にこれがすべて当てはまるとは限らない。例えば車体にはある程度の重さがあった方が路面の凹凸の影響を受けにくく、車高を一定に保ちやすいというメリットがある。
そしてこれと同様のことが、タイヤというサスペンションの上に“乗る”ホイールにも一面として当てはまる。タイヤはスプリング/ダンパーとともにサスペンションを構成する重要な要素だが、吸収、減衰を受け持つ帯域がそれぞれで異なる。特に“乗り心地”の評価を左右する人間の感覚は非常に繊細。
スプリング/ダンパーの要素だけでこれに対応することは不可能であり、すべての緩衝要素(手段)を最大限に活かすことが求められる。なかでも大きな役割を担うタイヤ/ホイールは、その重量も含め綿密に吟味される。軽ければ良い、もしくは重ければ良い、という単純な話ではないのだ。
■Answer
ばね下質量軽減は、サスペンション・ストロークがしやすくなりタイヤ&ホイールの追従性が良くなること、回転部の慣性モーメントが減ることで、ロードホールディング性、乗心地、加減速時の消費エネルギー低減などのメリットがある。
ただし、タイヤでは操安・制動・NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)性能向上のために(グリップ力やバネ・減衰特性を得るために)ゴムボリュームや内部構造部材強化など、結果的に質量増加が性能向上のために必要な側面を持っている。
ホイールも同様に操安・NVH性能向上のためには高剛性化が必要で質量増加を伴う。したがって、ばね下構成部品トータルの運動エネルギー低減のための質量軽減とばね下構成部品個々の性能向上のための質量増加を高次元でバランスさせることが肝要。