【海外技術情報】アンプル:わずか5分でEVトラックのバッテリー交換する技術の実証を、三菱ふそうと日本で実証へ
2ヵ月ほど前に当欄にて「アメリカ・サンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業であるアンプルが、わずか5分間でバッテリー交換を完了させることができるバッテリーステーションを稼働させた」と紹介した。そのアンプルが三菱ふそうと、日本においてEVトラック向けバッテリー交換技術の共同実証を行う契約を締結した。そこで今回は、アンプルのバッテリーステーションを復習しつつ、三菱ふそうの狙いについて紹介しよう。
TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA)
アンプルのバッテリーステーションは事業者を主対象とする
アメリカはサンフランシスコを拠点とするアンプルは、2014年にカレド・ハスナ氏とジョン・デ・スーザ氏が起業したEVバッテリー交換事業を行うベンチャー企業である。アンプルが狙ったのは個人ドライバーではなく事業者である。特にラストワンマイルの配送を担う事業者(UberとSally)との連携を実現して、社会実装を果たしている。
その背景にあるのが、EVが普及するにつれて顕在化した問題だ。事業所で働く職業ドライバーにとって、航続距離よりも充電時間の長さが問題として浮かび上がっている。この「異常に長い充電時間」を短縮するために生まれたのが、アンプルの新しいバッテリーステーション&バッテリー技術である。
アンプルを利用するには、市販のBEVのバッテリーをアンプルの専用バッテリーに換装する必要がある。アンプル・バッテリーは靴箱サイズでモジュール化されている。アンプル・バッテリーに換装しておけば、バッテリー切れが近付いたときにバッテリーステーションに行けば、自動的に使用済バッテリーが取り外され、完全に充電されたバッテリーと交換される、という仕組みだ。取り外されたバッテリーは再充電され、次の顧客が使用する。アンプルのシステムにおいては、バッテリーはドライバーではなくアンプルの所有物である。そのため導入時(バッテリー換装)にかかる費用に、バッテリーの製品代金は上乗せされない。
アンプル・バッテリーを採用するメリット等は過去記事で紹介しているので、詳細はそちらを参照されたい(https://mf-topper.jp/articles/10002010)。
アンプルと三菱ふそうが「eCanter」を用いて今冬、日本で実証を行う
そのアンプルと三菱ふそう(以下、MFTBC)とが、「eCanter」=EVトラックを用いて、日本でバッテリー交換技術の共同実証を行うことが発表された。MFTBCは「今回の実証では、より長距離を走行する用途などの活用の可能性拡大を探ります」と述べている。
「より長距離を走行する用途などの活用の可能性」というのは、中大型トラックへの適用可能性を探る、という意味なのだろうか?
MFTBCによると、アンプルのモジュールバッテリーを搭載した「eCanter」がアンプル『バッテリーステーション』に入庫すると、ロボットが自動でバッテリーを交換する、という。この仕組みはアメリカで社会実装されているのと同じである。アンプルの技術を小型EVトラックへの適用して、その機能性や耐久性、それに顧客受容性などを確認するようだ。MFTBCは「この取り組みを通じて、顧客の反応、この技術の拡張性、日本における将来的な商業化の可能性を検討する」と述べている。日本国内での試験車両の走行を2023年冬に実施する予定であるという。