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【海外技術情報】アンプル:わずか5分間でバッテリー交換が完了するバッテリーステーションが稼働開始!

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【海外技術情報】アンプル:わずか5分間でバッテリー交換が完了するバッテリーステーションが稼働開始!

アメリカ・サンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業であるアンプルが、わずか5分間でバッテリー交換を完了させることができるバッテリーステーションを稼働させたという。それはどのような仕組みで、どんなメリットがあるのだろうか?
TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA)

アンプルは2014年創業。EVバッテリー交換事業のベンチャー企業

プレスリリースを発したのは、アメリカはサンフランシスコを拠点とするアンプル。2014年にカレド・ハスナ氏とジョン・デ・スーザ氏が起業したEVバッテリー交換事業を行うベンチャー企業だ。同社によると創業以降は秘密裡に開発を続けた後、2021年に技術を公開すると投資が集まった。海外メディアによるとその総額は数憶ドルになったという。

アンプルが狙ったのは個人ドライバーではなく事業者。特にラストワンマイルの配送を担う事業者(UberとSally)と緊密に連携することで、社会実装にも首尾良く漕ぎ着けている。

バッテリーを自社製モジュラー式に換装。専用ステーションで手早く交換する

EVが普及するにつれて、航続距離よりも充電時間の長さが、ドライバーを悩ませる問題として浮かび上がっている。アンプルでは提携先企業のドライバーが「週の労働時間の25%に相当する10~12時間以上を充電ステーションで過ごす可能性がある」と聞いたという。

この現在のEVドライバーに固有の「異常に長い充電時間」を短縮するために生まれたのが、アンプルの新しいバッテリーステーション&バッテリー技術である。アンプルは「環境に優しいステーションでありながら、ICE車と同等に素早く簡単、そして安価に充電ができるシステム」と主張している。

アンプルを利用するには、市販のBEVのバッテリーをアンプルの専用バッテリーに換装する必要がある。アンプルは「当社は自動車メーカーと緊密に連携することで、すでに多くの既存プラットフォームに対応している」と説明する。アンプル・バッテリーは靴箱サイズでモジュール化されている。

アンプル・バッテリーに換装しておけば、バッテリー切れが近付いたときにバッテリーステーションに行けば、自動的に使用済バッテリーが取り外され、完全に充電されたバッテリーと交換される、という仕組みだ。

取り外されたバッテリーは再充電され、次の顧客が使用する。アンプルのシステムにおいては、バッテリーはドライバーではなくアンプルの所有物である。そのため導入時(バッテリー換装)にかかる費用に、バッテリーの製品代金は上乗せされないようだ。

このシステムを採用することで、アンプルは充電速度以外の価値を提供することに成功している。ユーザーは自身の所有者のバッテリーが劣化したり、古くなることを心配する必要がなくなる。EVの価値を大幅に低減させてしまうバッテリーが個人所有でなくなることから、ドライバーは自動車本体の価値を守ることができる。またアンプルがバッテリーを更新するたびに、利用者は常に最先端バッテリー技術の恩恵を受け続けることができる。また、アンプルがバッテリーを一括して管理するため、バッテリーの二次利用やリサイクルを効率化できる、というメリットも生まれた。

リリースには「アンプル・バッテリーを搭載したBEVのハンドルを握ったUberのドライバーが190マイルを走行した後、消耗したバッテリーを充電されたバッテリーと交換するために短い休憩を取りました。アンプル・ステーションに近づくと車両はステーションに認識され、ステーションの入り口ドアが自動的に上がります。駐車したらドライバーは携帯電話のアンプル・アプリで交換を開始します。5 分後、ドライバーは道路に戻り、仕事を再開しました」と記載されている。

今回発表された新たなステーションでは、小型乗用車のみならず、大型配送トラックをサポートできるようになった。「新たなドライブスルーデザインはユーザーフレンドリーであり、より安全で、より楽しいものです。交換作業中にドライバーが車両に乗り降りできるようになりました」と説明している。

ステーションの展開は容易であり、設置に必要な時間はわずか 3 日。ステーションは事前に幾つかのセクションに分けて納品され、現場で組み立てられる。ステーションの設置に、掘削は必要ない。

「ガレージや夜間充電のオプションを持たない都市居住者にとっての、信頼性の高いEV 充電設備が不足しています。当社のソリューションはそれを解決することを目指しています」 とリリースに記載があった。今後は一般ドライバーへも門戸を開放するのだろうか?

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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