電動化の時代?EVからHEVへの"揺り戻し"の中、改めて振り返るハイブリッドパワートレーンの多様性
2022年はパワートレーンの電動化が大きく進んだ年だった。華やかに注目を集めたのは多くのニューモデルが登場したBEVだが、そのいっぽうでHEVもまた着実な広がりを見せた。電気モーターを備えるパワートレーンは百花繚乱の様相を呈している。(世界的に現実的なソリューションとしてのHEVが見直される今、2023年1月発行のMotor Fan illustratedを振り返る。情報は当時のもの。)
TEXT:髙橋一平(Ippey TAKAHASHI)
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カーボンニュートラルの旗の下、パワートレーンの電動化が進行中だ。2022年はそうした世の流れを強調するかのように、新たなBEV、そしてHEVが数多く投入された。これらの分野に初めて参入するというメーカーが複数見られたことも印象的であったが、やはり興味深いのは技術的な変化である。
モーターとバッテリーだけで走行するBEVについては、プラットフォームを中心としたボディ構造から“内燃エンジン車の名残”が消え、よりフラットで広大なキャビンスペースを確保すべく、電動アクスルの小型化が進められた。モーターが中心となる電動アクスルの小型化というと、モーターの高回転化が提唱されているが、いまのところ大幅な高回転化はなされておらず、パワー素子の性能向上にともなうインバーターのコンパクト化や、冷却機構の工夫、そしてレイアウトの最適化などといった手段が用いられている。
次世代を見据えた試作品のレベルでは、30000rpmを超えるものも発表されているが、モーターの高回転小型化には、いまだ安価とはいえないSiC-MOSFET(パワー素子)と、高回転対応のベアリングが必要不可欠で、磁束の飽和などといった設計上の難しさも存在するため、もう少し時間がかかりそうだ。
そして電動化のもうひとつの姿であるHEV、そこに搭載されるハイブリッドシステムのほうは、なかなか興味深い状況となっている。より幅広い車種へ展開が広がるなか、さまざまな形態のトランスミッションにモーターが内蔵されるようになり、その技術構成も多様化しているのだ。共通点を挙げるとすれば、ほとんどが1モーター構成ということ。そしてステップATのHEV化ではトルクコンバーターが姿を消すというのが定番に。背景に覗くのは制御技術の進歩という要素である。